話題の富士山を登坂する道路のなかで嬉しいことに無料なのが富士山スカイライン( K 152)。河口湖側の有料(2000円)富士スバルラインのちょうど反対側の富士宮側に位置する。
ここでは40キロを維持する忍耐力と後続車を金魚のフンのごとく引き連れてしまうことによるプレッシャーのふたつの精神的圧力に耐えないとならないのである。
軽自動車よりも太いタイヤを履いた大型バイクがブンブン走っており、高速コーナリングが楽しめることを示している。
K152はかつて有料道だった痕跡を残置料金ゲートにみることができる。冬季閉鎖路であるため、このゲートで締め切るのだろう。高鉢PAを過ぎた先からヘアピンが連続しながら登っていく。空いていれば技量に応じて思い切りコーナーを攻めることも不可能ではない。
POLOではSモードの2速で駆け上がるが、低燃費志向らしいコンチネンタル製タイヤが悲鳴を上げつつ、それでも路面にしがみつこうと必死に奮闘する。
延々下りとなる復路はPOLOでは辛い。7段DSGというATは、2〜3速の守備範囲が狭く、2速でエンジンブレーキを使っても加速し、もたもたしているとオーバーレブしてしまう。これを避けるにはフットブレーキに依存せざるを得ないからだ。
幸い冷却効率のよいベンチレーテッド・ディスクを前輪に装備しているため、フェードするまでには至らないが・・・
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一般道路地図には表記はないが、日本林道協会選定の「眺望のよい林道日本一」というのが湯の奥猪之頭林道である。本栖湖を通るR300で下部温泉の標識に従いK415を越えると温泉街。
同林道は下部川に沿っており、下部の先の湯を越えると本格的な山道となるが、朝霧高原際のK414(静岡県)に突き当たるまで鋪装路が続く。
道幅は林道標準の1・5車線程度。山梨、静岡両県の県境にある同林道と同名のトンネルまでは温泉街を越えてしまえば、山梨側からの交通量はほとんどない。
路面はフラットで走りやすく、林道の平均的最高速制限(20キロ)を容易にこえる速度もだせる。が、万一の対向車を意識し、ブラインドコーナー手前では、ブレーキひと踏みで止まれるよう十分に減速しておくことが賢明である。
同トンネルから静岡側は一転して路面状況が変わる。一言で言えば、道にこぶし大の石が転がり出ているなど荒れているのだ。
同林道は山梨側は県営だが、静岡側は富士宮市営である。道路整備に関する県と市の財力差が、そのまま路面の整備差につながっているのであろう。
1カ所、長さ10メートル弱だが、路盤にうずたかく土石が盛り上がっている左コーナーがある。
停止。
漬け物石大の岩石を二つ取り除いて後、アイドリングスピードに近い速度でゆっくりと注意深く乗り越えていかないとならなかった。
法面を見上げれば、3段構えの砂防ダムらしき構造物から入りきらなくなった土石が路盤まで滑り落ちたことでできた天然シケインであることがわかる。
谷側は30メートルはゆうにありそうで深いが、路肩は谷に沿ってコンクリで補強され頑丈にみえる。水抜きパイプから勢いよく谷底に向かって土中に染み込んだ水が放物線を描いて流れ落ちているのがみえる。
1週間前の台風18号が本州を通過した際、同林道も安全確認が終わるまで一時的に通行止め措置がとられていた。
しかし、この場所はそれでもこの有様で、なんとか通行できるからいいものの、恒常的に土石崩れに見舞われる恐れがあると推察される。
土石の固まり具合からいって18号の前にすでに路盤には崩れ落ちていたと推測され、林道管理者はこの程度では通行に支障はないと判断しているようにみうけられる。
この林道は台風やもとより大雨などの後に走行する場合、道路情報を事前に調べてから行かれることをお薦めする。
休日ともなれば着地点から離陸点までハングライダーの地元クラブが参加者をハイエースでピストン輸送しているようで、対向車として遭遇することもあるだろう。林道終盤には着地点の脇を通る。
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今回、中央道一宮御坂ICからR137を経て途中分岐する神座山林道からスタートし、反時計回りで富士山を周遊するルートとしたので、富士山スカイラインや湯の奥猪之頭林道は経路後半部分にあたる。
神座山林道は御坂側からR137(御坂みち)を河口湖方面に向けて行く経路では、分岐点がわかりにくい。R137若宮交差点からバイパスに入り、金川を渡る十郎橋(鉄橋)を目標にするとよい。渡河した先に標識も信号もないが、右に折れる道がみつかるはず。
それが同林道への入路である。同林道は檜峯神社を終着点とする、およそ片道3キロの往復路とも同じ道をたどる、いわゆるピストン林道である。
のっけから急坂でずっとコンクリの鋪装路が続くが、基本的に一車線分の道幅しかない狭路である。穂の重さで林道に覆い被さるようにススキが出張っている箇所があり「この道、行かれるのか」と思わず脳裏に浮かぶようなところもある。
加えて、クルマの進行方向に対して、横方向に波打っている路面。速度を上げれば、波打つ路面の波状攻撃を受け、車体が上下に大いに揺さぶられ不快。
いきおい20キロ程度でトロトロと登っていくしかない半面、どんどん深山に入り込んでいくという雰囲気は備えている。
鉄索ゲート出現。しかし「ここまでか」と諦めてしまうのは早計である。
ゲートは施錠されていない。通行者・車は自らゲートを開けて先に進むことができるからだ。動物侵入を妨げるための遮蔽柵で、おそらく全国規模で食害が問題となっている鹿よけであろう。
林道沿いはヒノキやスギなどの成木並木となっているだけに、樹皮を食害から保護するための柵だ。
同林道入り口前のR137を御坂方面、カムイみさかスキー場手前に蕪入沢上芦川林道の入り口がある。走りやすい舗装林道で上芦川でK36に合流する。
同林道で鹿2頭、リス2匹にであった。同林道と檜峯神社とは最短部で2キロ程度しか離れていない。彼らの脚力をもってすれば、容易に神社に向かう林道に侵入できるだろう。
鬱蒼とした森に囲まれた檜峯神社は予想外に立派な社である。標高1000メートルちょっとで、R137分岐からざっと700メートル登ったことになる。
午前6時前に到着。日の出を過ぎているが、林立するスギだのヒノキだのに神社は覆われ薄暗いうえ、朝霧が立ちこめていた。東京よりも10度は低い気温13度と長袖シャツではもはや寒いの一言。
檜峯神社は「ぶっ、ぽう、そう」と発音しているように鳴き声が聞こえる鳥が、コノハズクであることが国内で初めて確認(昭和10年)された場所である。
ブッポウソウの鳴き声
また、拝殿には龍の彫り物がはめ込まれている。作者は幕末に官軍の先駆け隊として活動しながらも裏切られ、刑場に消えていった相良総三率いる赤報隊のメンバーのひとりだった宮大工だそうである。赤報隊を描いた小説としては北方謙三氏の「草莽枯れゆく」がよろしかろう。
さらに幹周り7メートル、全長31メートルのスギが県指定天然記念物になっている。
同神社は釈迦ヶ岳(1641メートル)、大栃山(1415メートル)への登山口のひとつで、境内駐車場に車を置いて入山する。
このため、登山者の行動時間を予想して林道走行したほうが、離合箇所に恵まれないだけに対向車にであう機会は少なそう。
再びR137に戻り蕪入沢上芦川林道を通過しK36を北上、新鳥坂トンネル経由で金川曽根広域農道に入り、前間田で黒坂里道へ。
ここから名所山林道、大窪鶯宿林道と経て境川町のK308まで一気通貫で抜けられる。一般向け市販道路地図の多くは白線の道として描き、林道名も記載されていない。
中央道一宮御坂と次の甲府南両ICの間で南北に走る道は一宮御坂側から甲府南に向かってR137,K36,R358(精進湖方面)の3本。
このうちK36とR358の間を縦横走しているのが、対象3林道である。
3林道ども鋪装路で4メートル幅だが、林道では1・5車線幅と考えておいた方がよい。これといった特徴を見いだしにくいが、走りやすい。
しかし、台風の影響なのか、枯葉や小枝が路面上に押し流されている箇所が少なくない。
タイヤの弱いサイドウオールを切り裂きかねないシャープな断面を持つ石が枯葉の下に隠れているやも知れず、慎重に走るにこしたことはない。3林道のなかでは名所山が最後に鋪装されたようで、路面端を示す白線が鮮やかで新しさを感じる。
残暑の今、3林道合計20キロ弱あまりの標高1000メートル級で涼感を得やすい山間路を走れることは、それなりに魅力的である。
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