小海側から上野側(群馬)に抜けたのだが、1・5~2車線の道幅とフラット路面に加え、ストレートとコーナーのバランスにとても優れた軽快なワインディングロードである。急激に高度をあげる部分はほとんどなく、徐々に標高を上げていく。
K124は山の稜線を越えていくようで開けた部分が多く、視界は明るい。モミジやカエデなどが赤や黄に色づいた紅葉をたっぷり目にすることができる。
また、道路の吹きだまりには散りゆく落葉樹の葉が落ち葉のカーペットのように敷き詰められ、タイヤが踏みしめるとザッーという軽い擦過音を立てる。
今回、これまでのPOLO代わり、Renault sportがチューンした自然吸気2㍑でPOLOの倍の最高出力と6MTを備えたLUTECIAを持ち込んだ。
K124でLUTECIAは驚異的に粘る3速で直線とコーナーをほぼリズミカルに走れる。が、きついコーナーで2速に落とし、減速するとともに、直線に向けての加速を得るシフトワークも時に必要である。
LUTECIAは足回りも強化されているため、ロールが少なく、くいつきのよい215/45R17のワイドタイヤと相まって安定した姿勢を保ち続ける。3000回転を越えると、甲高いエンジン音に変化、耳障りのいいRenaultサウンドを奏でる。
K124で長野、群馬の県境となっているのが、ぶどう峠(最高標高地点、1524メートル)である。R299と並行するK124は、このぶどう峠を走りたいがために選択するケースが多い。
1982年にこの道が県道に昇格する前は、人道を拡幅したとされる未舗装林道(1968年竣工、峰越連絡林道ぶどう峠中ノ沢線)であって、峠には群馬県出身の福田赳夫元首相(故人)が峠名を揮毫した黒大理石の完成記念碑が設けられている。
実はK2には、長野K421(八幡小諸線)を経由して入った。R141の小海先の馬流橋(まながし)あるいは東馬流橋で千曲川を渡りK421に入路する。
このK421,県道と銘打っているものの、宿渡の集落を過ぎると、実態は林道といっていい状況で、現地の方には申し訳ないが、険怪道といいたい。
ほぼ1車線の上り坂で、道両側の樹木が空を覆い昼なお薄暗い場所もある山道で、県道であることを告知する標識をみつけることはできなかった。
おまけに2箇所の分岐点になんの標識もでておらず、地図を所持していなければ、大いに迷うだろう。親沢峠からは下りになるが、K124合流地点近くにある山村留学センターという施設にでるまでは気が抜けない。
K421を全線走行するのは地元の農林業関係者に限られ、利用者数はひじょうに少ないことをうかがわせる。それゆえ林道然としていていいということはないが、お金はかけられない県道になっているのだろう。
K124がR299と合流するT字路を左折し、山梨K45(下仁田上野線)に。国民宿舎やまびこ荘を目標に塩の沢峠に向かう。
昭和40年代半ばまでは国内ビックラリーなどで主戦場となった峠である。当時はグラベルだったが、現在は鋪装路で登っていける。山道だけにコーナーも多いが、平坦な路面でテンポよくスムーズに走れる。モミジが紅葉している。
峠手前で御荷鉾スーパー林道(鋪装)に入るが、途中、崩落による通行止め。道なりに走りやすい七久保橋倉林道(鋪装)からR299に降りるほかない。
R299志賀坂峠のトンネル通過直後に右折し、金山志賀坂林道に。全面鋪装。だが、路面の荒れた狭路で、速度は出せない。八丁峠(1240メートル)を頂点とするが、林道沿いに植栽されたモミジの紅葉がはじまったところ。景観は開けている。
紅葉で知られている林道らしく、平日にもかかわらず、8人のサイクリストが大汗かきかきペダルをこいでいたほか、クラウン、ハイエースなど5台の車とも出会った。林道でこれだけの対向車両と遭遇するのは珍しい。
この林道は埼玉K210にぶつかって終わるが、廃墟マニアには高名な場所を通過する。八丁峠下の小倉沢にある石灰鉱山(稼働中)の社宅跡などがそれ。
林道に沿って山の中に突然、朽ち果てゆく木造廃屋が集まっているのは異様な光景であり、ひとによっては怖い感じさえするだろう。少しずつ解体されているようで、観察したいのなら今のうちである。
同林道には紅葉時期限定開設の簡易茶屋がある。猪汁とコンニャクは美味である。茶屋の壁にはオフロードバイク乗りのメッカともいうべき近隣の中津川林道に森林鉄道が敷設さ
れ、昭和30年代まで存在した軌道と車両写真が掲げられており、撮影ポイントを当時と現在を対比させる趣向を凝らしている。
中津川林道は法面崩落にともない通行止め規制が敷かれ、12月には冬季閉鎖される。年内規制解除は絶望的である。
今回、中央道長坂ICで降車し山梨K28(北杜八ヶ岳公園線)を北上。天女山入り口交差点で山梨K11(北杜富士見線、通称八ヶ岳高原ライン)に入り、大平交差点から長野K484(富士見原茅野線)を通り、途中から八ヶ岳ズームライン、八ヶ岳エコーライン(広域農道)を経て長野K191(渋ノ湯堀線),K484を通過してR299に向かった。
K28とK11は2道路状況が似た広幅観光2車線路で、中速コーナーに恵まれ、紅葉の樹間を走行する。K11はK28に比べ、凹凸路面が少なくなく、やや荒れている感じがするが、いずれも走るのに問題はない。
K484では東京・新宿発祥のカメラ系大手家電・情報機器量販店の研修センター隣接駐車場に植えられたモミジが見事に赤く色づいていた。
おもしろいのがK191の横谷渓谷に沿った道である。具体的には三井の森入り口(バス停いすみ平)から写真趣味人御用達のひとつ御射鹿池までの間。数キロと短いが、ヘアピンの連続で急激に高度を上げていくのだ。
コーナー、ストレートともに2速を多用するが、ローギヤード6速ゆえ2速がすぐに吹き上がる。3速にシフトアップするも、すぐにコーナーが迫る。ブレーキング。同時に再び2速にたたき込んで抜けていく走り方をすると、より痛快である。
午前8時過ぎだったが、御射鹿池には5~6台の車が駐車し、高価な一眼デジカメと3脚で武装したマニアが池にレンズを向けていた。しかし、当日は風のせいで白樺などの池面映り込み対象物が揺れてみえ、撮影日としてはあまり向いてはいないそうだ。
山岳国道として著名なR299は、バンピーな路面状況で、かつてほど快適とはいいかねる。当日、ガスがでていて国道峠として二番目の標高点、麦草峠(2317メートル)まで淡々と登坂していくのみ。
R299とK480との分岐点にあるレストハウスふるさと。
同駐車場から佐久平側はまれに見る雲海にすっぽりと覆われ、大雪原をみるごとくの展望だった。前日が雨だったようで、気温が上昇したことで、降り注いだ雨が水蒸気となって現出させた光景である。降雨の翌日に運がよければ大雲海に遭遇できるだろう。