2014年1月1日

雪舞う赤城・足尾路

12月中旬、週末から寒波が襲来するとの予想に違わず、赤城山岳路は雪であった。雪を回避すべく経路変更した足尾一帯も積もりはしないが、雪が舞っていた。冬が訪れた赤城・足尾をRenult LUTECIA RSで巡ってきた。

Lutecia RS

今回の紀行は関越道・赤城ICからまず赤城山に向かった。赤城西麓広域農道を通り、二本松で右折し群馬の県道251(K251,赤城道路)で山頂まで走る。

赤城ICで白いものがちらついていたが、西麓広域農道は、車の通った轍跡を残して路肩部分がうっすらと冠雪している有様で、道幅が狭くなったように見える。だんだん標高が高くなっていくにしたがって、轍部分も雪をかぶっていき、K251に入るや3㌢前後の全面積雪となった。

Lutecia RS
雪はやまず降り積もるばかり。ワイパーのゴムが寒さで硬くなり、ウインドウの雪をぬぐう音がガシャ、ガシャいいだす。

BSのスタッドレスを履いてはいるが、LUTECIAはタイトコーナーでステアリングを切っているのに、切った方向になかなか曲がらず、コーナーの外側にクルマが向かっていく。

鋪装路ではアンダーステアをほとんど感じさせない高速コーナリングをみせるLUTECIAだが、圧雪路と違い凍った路面に積もった新雪では30㌔の低速でもアンダーステアが顔を出す。意識的にアクセル開けるとトラクションコントロールが素早く介入し安全に走れと諭される。

Lutecia RS
慎重なアクセルワークで赤城山頂を目指していくほかない。間断なく降る雪のために、すでに夜明けを迎えているのだが、薄暗く、葉を落とした樹木に雪が貼り付き、あたかも霧氷のように見える。雪さえなければ、赤城道路は軽快な山道だったようにおもえる、

赤城山頂(1350㍍)近辺のカルデラ湖、大沼にどうにか到着。関越道・鶴ヶ島で氷点下2度だった気温は同7度まで低下、クルマから降りると寒風に身をさらし、寒いこと、寒いこと。

赤城神社の大沼に架けられた朱色の神橋を渡れば、大沼が一段とよく概観できるはず。しかし、遮るもののない湖上ゆえ吹きすさぶ寒風で、横殴りの雪となっており、そんな意志は湧いてこない。

Lutecia RS

湖畔にはレストランというには言い過ぎの、少々くたびれた昭和の時代の飲食・土産物店といったほうがよさそうな店が建ち並んでいるものの、午前7時30分頃とあって、当然、閉店中で寒々とした風景であった。

Lutecia RS予定では赤城山周辺のワインディングロードを走破することにしていたが、雪を避けるために足尾に向かうべく当初スケジュールを変更した。

まず山頂からK4に入り途中から空っ風街道に向かう。K4は下り。積雪のために慎重な運転を余儀なくされる。その脇を雪になれた地元の4駆車が近づいてくる。道を譲るが、速いこと、速いこと、地元車はあっという間に視界から消えてしまった。

赤城国際CCなるゴルフ場近くまでK4を降りてくると、路面の雪は消え、山頂から風に乗って流されくるらしい雪が舞っているだけ。積雪の恐れはなくなった。

Lutecia RS
新地で左折し空っ風街道へ。同街道の「赤城青年の家」付近で、当然、右手に緑色電車が鎮座しているのを発見。事後調査で1930年代に製造され、通勤の足などとして、かつて使用されていた東急目蒲・池上線の「デハ3499」を車両保存会がレストア中であることがわかった。

空っ風街道の前橋の街を遠望できるロケーションでは、瀟洒な別荘が建っている。また、三夜沢町付近は大きなアップダウンとコーナーで構成された2車線たっぷりの豪快なワインディングロードで、ようやくLUTECIAは本来の活発な走りを取り戻した。

Lutecia RS
赤城CC近辺で空っ風街道と別れ、K336入路。道なりK335を経て足尾に向かうR122に合流する。

K336は空っ風街道よりも道幅は狭くなり、対向車と出会えば、減速して通行するという3ケタ県道標準の道である。K335との交点は下りの右回りヘアピンを回りきったところで、県道番号を示す標識が立っている。

ここで珍しいクルマに出会った。1992~97年に発売されていたCR-X delsol(HONDA)である。一見ミッドシップのように見えるが実はFFというシビックベースのスポーツ車。街でみることも稀となった。delsolはK335からきて、K336に抜けていった。

Lutecia RSこのヘアピンの頂点は十字路で、K336直進で橋を渡り「梨木館」という温泉旅館で行き止まり。左折側にも狭い舗装路が続いている。

試しに左折してみた。梨木沢線という林道であることが道路脇に設けた標識でわかった。鋪装路の尽きた先に砂利道が続いており、林道を延伸しているものの、抜けられそうにないと判断し、Uターン。途中、この林道から左に分岐する道をカーナビでみつける。K335の北側を通り、宿廻近くでR122に接続する、ほとんどK335をバイパスする山道のようで、行ってみた。

Lutecia RS

この山道は出てきた標識で林道赤城東麓線であった。真新しい片側1車線の広幅コンクリート鋪装路に出くわすが、ほどなくして道幅が狭まりダートに変わり、またアスファルト鋪装路が復活するのである。とくに眺望のよい林道でもない。

宿廻側の林道入り口には林道城梨線の標識。どこで赤城東麓線と接続しているのか不明だが、とにかくK335の大半をパスしてしまう林道であることを確認。3林道とも1台の対向車とも出会わなかった。
Lutecia RS

R122は渡良瀬川の沿って走るわたらせ渓谷鉄道と併走する道路だが、さらにR122の東側を併走するK257にクルマを向けるべく上神梅駅を訪れた。

駅前には建て直したのか比較的新しい個人住宅が建ち、駅斜め前にはコンクリートの集合住宅という背景の中で、掘立小屋のような古ぼけた小さな木造駅舎だけが存在感を主張する。

Lutecia RS渓谷鉄道がJR足尾線と呼ばれていた時代からの駅舎で、そこだけ時間が止まっているのである。この駅舎は撮鉄の方々にとっての名所である。

上神梅駅近くには貴船神社なるこれも名所のひとつがるものの、赤い鳥居が見事という以外、信仰心の薄い者にとってとくに感想はない。

草木ダム
K257は花輪でR122と合流するが、草木ダムの堰堤を抜けることでR122からK343に入る。水資源機構管理の草木ダムは重力式コンクリ構造で完成が1976年などと概要を記したダムカードを管理事務所で訪問記念にゲットしておく。

K343はダム建設にともなってできた草木湖面を望みながら右岸を縫う。だが、1車線といっていい峡路で、恐ろしくクネクネ曲がり、ハンドル操作多忙路である。それなりにおもしろい。

Lutecia RS
K343は沢入駅先で東瀬橋を渡河し再びR122へ合流する。中野駅少し手前で巨大な複数のパラボラアンテナ施設脇を通る。施設壁にはdocomo。走行後の調査でNTTの小夜戸衛星通信所(みどり市東町)という衛星電話関連施設であることを知った。全国2カ所あるうちの一カ所である。

さてR122から通洞でK250に進路を変更し、その終点、銅親水公園に向かう。足尾、閒藤・・・発電所、硫酸タンク、精錬煙突など足尾銅山の跡地が続く。閉山してすでに半世紀近い。巨大な廃墟と化した施設群である。

むろん街も人口減少し、活気を失って久しく、ちらつく雪のなか、静まりかえっている。電気店の横塀に「日立ワードプロセ」までだったかの、白地にオレンジ文字の看板が。残り文字ッサーが欠けているのが、もの悲しさを誘う。

Lutecia RS

足尾銅山は世界遺産登録を目指していると聞く。同じ群馬の富岡製糸所跡が同登録に向けての動きでは先行している。銅山はこのままでは老朽化が進むばかりである。

Lutecia RS

デカい砂防ダム隣接の銅親水公園にはレストランがあるのだが、日曜日だというのにクローズドしている。冬に訪れる観光客は少ない。冬季閉鎖してしまったのだろうか。

Lutecia RS
「しょうもない」とひとりごちて、250を足尾まで戻り、今回実質最後の山道走行となるK15経由K32で東北道・栃木ICに向かうことにした。

K15は粕尾峠(標高1100㍍)への登坂がワインディングロードである。路面には白い粒(凍結防止剤)が一面にばらまかれていた。同剤を散布してまもない時間しかたっていないことを示すもので、景気よく走るのはそこそこにしておいた。

走行画像を撮るためアクションカメラを車体にセットしたはずだが、手元スイッチをいれても作動ランプがつかない。
「??」
とりあえずクルマを止める。
カメラは車体についていない。セットしたのか、外したのか、一時的記憶喪失状態で、まず車内を探すがみつからない。脱落したと考えるほかなく、戻ってみる。

Lutecia RS
数分戻ったところで、枯葉積もる道端になにやら黒い物体が・・・

「あった」

カメラ取り付け吸盤のセットが甘かったようで、路面からの振動で転がり落ちたのだった。
「やれやれ」
数台のクルマと行き交ったのだが、誰もカメラとは気がつかず、ゴミかとおもわれ拾われなかったのが幸いした。

Lutecia RS
冬枯れで道路脇の樹木の葉が落葉。この結果、周囲の見通しが素晴らしくよく、粕尾峠のつづれ折れ状態がはっきりと目視できた。同峠は気温1度で雪が降っていたが、積もるほどではない。足尾で6度だったので、標高の高さが気温を下げているのだ。

峠には竣工記念石碑が建立され、昭和28年(1953年)に開通したことを知る。今年で60年を迎えた還暦道路である。

Lutecia RS
昭和28年にはNHKと日本テレビが本放送を開始したほか、10円玉硬貨が生まれた年で、ヒット食品として永谷園の「お茶づけ海苔」があげられている。

K32はごく普通の県道でとりたてて強い印象はない。後ろからポルシェのボクスターがフルオープンでかっ飛ばしてきたが、さっさと左側により道を譲った。ほどなくして4~5台の車列に阻まれ、ボクスターの独走は終わりを告げる。

Lutecia RS

東北道に乗り入れるや関東の平地は快晴の一日であったことが一面の青空で知れた。





■全行程(GPS):約452km/最高高度(GPS):約1,400m
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