2015年1月3日

C63の魅力はM156の魔力

 今回はいつもの紀行ぢゃなくC63AMG(W204)のエンジン、M156型に関する四方山話を書き綴ります。

M156

 M42オリオン大星雲なら知ってるけどM156は知らない?
 M156は、AMGがエンジンバカ(?)とも称されるDr.フリードリッヒ・アイヒラー(Friedrich Eichlers.)を引き抜き、悲願の自社設計・生産した大排気量自然吸気エンジンです。C63AMGの魅力はこのエンジン抜きでは語れません。他の63シリーズがダウンサイジング・ターボとしてエンジンブロックまで変更されたM157に切り替わるなか、エコとは孤立無縁の貴重な存在だった。

M156

 そして、新しいC63(W205)は新開発の排気量4.0L V型8気筒ツインターボエンジンに換装される。この新開発エンジンは、AMG GTに載るものと基本的に同じだけど、従来同様ドライサンプとウエットサンプの違いがありM177と呼ばれる。実はこのエンジン、A45 AMGに載るM133と濃い親戚関係にある。

 新型は「メルセデス-AMG C63」と呼ばれ「ベンツ」と表記していた場所に「AMG」が鎮座してる。今までメルセデスのスペシャルモデル扱いだった「AMG」を新しい「ドライビング パフォーマンス・ブランド」にしようという企みなんだろう。そしてその頂点に立つのが「メルセデス-AMG GT」なんだね。都内ぢゃやたら見かけるAMGモデル(除:バッジAMG)、単に最高価格モデル名と間違って認識されてるんぢゃないかと思うよね。

 いよいよ名機M156が檜舞台から葬り去られるときがきた。

 アフェルターバッハで熟練工ひとりで組み上げるエンジン。そのテクノロジーは高性能エンジンの証、剛性重視クローズドデッキのブロック、シリンダ間隔僅か6.8mmのライナーレスシリンダ、クランクキャップをロアスカートと一体設計、ロッカーアームを排し高回転での追従性と信頼性を高めたシンプルなバルブ駆動、ストレート形状のインテークマニホールドでレスポンスの向上を狙うなどなど…

 レースで培われた高度なテクノロジーを惜しげもなく注ぎ込まれた珠玉のエンジン。自然吸気のシャープなレスポンスと大排気量ならではの強大なトルクを絞り出す。その回転フィールは、モーターのようにスムーズでウルトラ滑らか。3,000回転越えるとカムに乗りレブリミットまで一気に登り詰めます。イマドキぢゃないけどポート噴射ゆえ高回転まで回してもザラつかないのも嬉しいね(^^)。

M156

M156

 「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー 2009」ベストパフォーマンスエンジンにも選ばれてる。

 でもね、最近のAMGって人材流失が止まらない!
 エンジン及びパワートレーン責任者を任された彼、VWに移籍しGolf Rのエボリューションモデル、R400のエンジン開発に携わったらしい。そして、すべてのAMGモデルに関わりブラックシリーズを手掛けた「アルント・マイヤー」はBMWのMディビジョンに移籍しF30型M3及びM4をチューニングしたと言う。これだけ聞くと、チョッと心配になっちゃうね…

 アイドルから高出力エンジン独特のメカニカルノイズを響かせ軽くはなったけどメルセデスの伝統、重めのアクセルひと蹴りすればレブリミットまで瞬時に吹け切り、とても6.3リッターとは思えない。そうかと思えば渋滞や街乗りもまったく苦にしないフレキシビリティを兼ねそなえる。乗る人を選んだキャブレター時代の高出力エンジンとは隔世の感があるね。

 残念なのは、180度クランクピンのフラットプレーンぢゃないこと。フラットプレーン・クランクだったら、Ferrari musicを奏でたかも知れない(汗)。最近のハイパフォーマンスカー、スピーカーまで使って人為的に官能サウンドを仕立ててる。いくらなんでもそりゃないよねぇ(>_<)。吸気音、メカニカルノイズや排気音、それらが渾然一体となって五感を刺激するんぢゃないかい。

 その始動時の排気音、温間時ならさほど気にならないけど、冷間時は、Startボタン押すのをためらうくらいの爆裂音!。こんな音でよく車検通るよねって感じ。もっとも吠えたフェラーリやポルシェもすんごい音量だけどね。

 ダイアルやスイッチひとつでECUマッピング変更し運転モード選べるのがイマドキだけど、潔く選べるのはシフトモードだけ。そのシフトモード、SやS+を選べば、ここぞというタイミングで心地よいブリッピングを伴い電光石火のシフトダウン。人間さまも「やる気スイッチ」入っちゃうんだけど、アクセル抜いた時のアフターファイアは演出過剰ぢゃないかい(汗)

 Dセグメント標準的サイズのCクラス(W204)、エンジンルームを延長し押し込まれたM156、ボンネットを開けても何処にも手が入らないぢゃないか!。始めてボンネットを開けようとして焦ったね!。室内のボンネットオープナーを引っ張ってもグリルからベロみたいなリリースノブが出てこない。で…、結果はボンネット裏をまさぐる日本車と同じ方法だった。(汗)。そうそう、アルミ製のボンネット、生意気にキャッチャはふたつ。

 増大したパワーと質量に対応するため専用設計されたフロントセクション、BMWほどインフォメーション豊ぢゃないけど正確なステアリングは雑味のないインフォメーションを伝えてくれる。



 SLS AMGに積まれるM159のスペシャルユニットはドライサンプだけど、一般的なウエットサンプのM156。オイルクーラーついてるけど容量不足のようで魂入れて走るとスグ油温が危険ゾーンに近づく。ちなみにブラックシリーズはオイルクーラーの容量アップが図られているそうです。図太いトルクの割に油温に神経質なんだなぁ(笑)

 そんなこともあり、スピードメーター内側のマルチインジケータは、常時油温が表示されるAMGモードにしてます。メルセデス伝統を受け継ぐのか平常時でも高めの油温を表示してる。その油温ですが、80℃を超えるまで水色表示で「回すなよ!」と、注意喚起。気温の低い冬は当然油温上昇遅く、遠くない首都高入口まで水色表示…。

C63AMG

 燃費は覚悟してましたが、燃料タンクが66リットルと小さめ。Dセグとしてはむしろ大きめと言えるのですが、残量警告を目安とすると400kmも走れない。ガソリンスタンドが減り、24時間営業のスタンドも少なくなった昨今、ワインディング走る時は、早めの給油を心がけないとね。

 そうそう余談ですが、輸入車の多くがドアロックとフューエルリッドのロックが連動してるぢゃない。コレに慣らされてると日本車でガソリンスタンド行ったとき焦るんだよねぇ…。

「マンタンお願いします♪」
…しばらく間があって
「お客さん、フタあけてくださ〜い!」
「えっ!、オープナーってどこだよ?」

ありゃ!、M156の話がどこかへいっちゃったね。