秋田市の土崎港に近い宿泊地を午前7時6分に後にする。天候は昨日とはうって変わって晴れ、気温20度。湿度が低く爽快な気分。まず国道7にでてすぐにこれと並行して海岸線を通る秋田県道56、国道101で寒風山に向かう。
56は7のバイパス的役割を果たしているようで信号が少なく長いストレートで構成され、発電風車を眺めながら走るものの、周囲は殺風景である。この道の交通量は休日のためなのか少ないが、高速道並のスピードですべてのクルマが吹っ飛んでいる。これも海沿いを走る101から県道54に入り、すぐに55で寒風山登坂路となる。
同山山麓の道路沿いはススキの最盛期で肌色の穂が日光を反射して銀色に輝いている。タイトコーナーは少ない。寒風山は標高こそ355㍍と高くはないが、周囲に高い山がなく、回転展望台駐車場からは大潟村の黄金色に色づいた水田や日本海、男鹿半島の付け根にある石油備蓄基地の白い貯蔵タンク群も見渡せた。妻恋峠を越えると下りとなるが、登りほどの景観はえられない。
55から男鹿半島の最突端入道崎につながる、距離の長い「なまはげライン」が分岐しており、これに乗り入れる。道両側に水田が広がる区間もあるが、樹林のなかを通り抜けていく区間が長い。ここも交通量が極端に少ない2車線快速ロードである。県道121を抜け、同55で同ラインは終わる。55で入道崎に。同岬には5~6軒の昭和の時代風の土産物屋とその前の広い駐車場がある。8時40分。観光バス、乗用車、バイクが止まっており、土産物屋も営業を始めているが、たいした観光客数ではまだない。灯台と日本海をチラッとみて121の同半島周遊道をいく。
同半島を周遊するには戸賀湾近くで県道59に進路変更しないとならないが、同59と121が立体交差していて少しわかりにくい。59は良景観区間では深いアップダウン部があり、急な上昇路で空中に飛び出すごとく、瞬間的に空しかみえず、着地するとそこには日本海が広がっているというジェットコースター的味わいがある。59は左側が緑の崖(法面)、右側が日本海を臨むという道路だが、石油備蓄基地のタンクがみえてくると終盤で民家がでてくる。
59から国道101を経て干拓地の東端を通る大潟村の県道42に。干拓地に広がる広大な耕作地を眺望できると予想していたのだが、あにはからずや県道の両脇には防風林なのだろうか樹木が立ち並び、全貌を捉えることはかなわなかった。樹木の隙間から稲穂をみる程度でしかない。上空から眺める景色と平面でみるそれとでは大きなギャップがあった。干拓地を東に走る54も同様の状態で、アテが外れたまま国道7にでて川尻から能代山本広域農道に入った。とりあえず目指すのは米代フォレストラインである。
能代山本はアクセス道として選んでいるが、刈り取りを待つばかりになっている黄金色の水田のなかを通り抜けていく農道で、果たせなかった八郎潟干拓地での予想光景を存分に楽しむことができた。同農道は国道7と県道4にはさまれており、両道のバイパスのようで交通量もかなりあり、今や生活道路として機能しているようにうかがえる。
同農道は無料開放中の秋田自動車道の能代東ICをくぐったところで県道64、同63へと接続する。63で県道143に右折。143が終了した先から米代フォレストラインがはじまる。同ラインは森林基幹林道米代線というのが正式名で、林道標識までのわずかの間が狭幅の林道チックな道だが、標識以降は2車線となる。同ラインは3年前の10月に全通し「のしろ白神の道」のモデルルートの一部にあたる。八峰、能代、藤里の1市2町を東西に貫く、全長30㌔、幅員7㍍の本格的な山岳路である。11時に同ライン入り口に到着、さっそく走り出す。交通量はないとはいえないが、ひじょうに少ない。幅員が広く中速コーナー主体で結構なスピードで走れる。ただ、山の中を行き交っているゆえに景観は効かず、緑の森林のなかをいく高速林道である。
同ライン途中にある重力コンクリ製の素波里(すばり)ダムに寄る。堤高70㍍、堤頂長142㍍とダムとしては小規模で灌漑用水を確保するのが建設目的。1970年竣工。管理施設があるが、無人のようだ。雪の影響なのか、堤体を形成するコンクリの角がはげ落ちている箇所が目立った。このダムの南直下に茂谷スカイラインというのがある。フォレストラインがクロスする県道322の下根城から素波里ダムに向かう道路である。これも322分岐点から走ってみた。今では通過するクルマも稀なのだろう道路の両側から雑草が繁り1・5車線あるか、ないかの道幅となり、小刻みにカーブを連ねて高度を稼いでいく林道といっていい狭さ。峠と覚しきところにトンネル(茂谷隧道)が設けられている。一台分幅しかない隧道で、半面、妙に高さがある。切り出した木材を山盛り積んだトラックが通過できるようトンネルの高さを確保しているのかもしれない。スカイラインとはいうものの、眺望がとくにあるわけでもない。フォレストラインができたことで同スカイラインの一般車を通す役割は終わっているといえる。
米代フォレストラインは藤琴川にかかる藤琴橋が終点で、同橋を渡り県道317に合流し左折。走行後の調査で藤琴橋が今では珍しい木橋として建設されたことを知り、現地で停車して鑑賞すべきだった。317で西目屋村に向かう。この道は藤琴川に沿って走るが、険道の名に恥じない道程である。なかでも釣瓶落峠(590㍍)までが1車線強の幅員しかなく、くねくね回り込みながら林間のなかをいく。眺望もない。藤琴川を幾度となく渡るのだが、この橋が完全1車線しかないうえ、鋭角的に旋回させられる。狭い道だけに行政もよくわかっていて対向車をかわす待避スペースが随所に設置されている。それでもブラインドコーナーが多く、たえず注意深く走らせるほかない。幸いにして同峠までに出会った対向車は練馬ナンバーのXトレイルのみだった。千葉ナンバーのワッペンをリアゲートにたくさん貼り付けたローダウン・ワゴンMRが先行していたが、少し広くなっている同峠でUターンしてしまった。同峠が秋田、青森の県境である。
同峠を過ぎると、尻高沢、湯の沢川に沿っていくが、尻高橋の先で2車線幅員となるが、また狭くなったり、広くなったりする。最後はダートのお出ましである。しかし、ダート部は3台は横に並べるほどの幅員の区間もある。前日か、当日早朝に降った雨のために水たまりが多く、クルマは泥だらけ。青森県道28にぶつかる西目屋村砂子瀬手前でやっとダートから解放された。
28に入ったのが13時20分。ここから当日ラストメイン走行路となる岩木山を目指す。28から県道204を通って同3に抜け、同山に向かうことにした。
204はなかなかのワインディングロードで中速コーナーと大きなアップダウンに恵まれた道だった。3は岩木山周回道の一部で、標識に従って岩木山方面に折れる。岩木山に登る道路は津軽岩木スカイラインという有料道路である。ピストン道なので料金所で往復1800円をとられる。この有料道のすごさはコーナー数69で同山8合目までいっきに登り詰めていくことだ。しかも、コーナーというコーナーがヘアピンで、コーナーをつなぐ直線がひじょうに短いのである。上空写真ではまるでジッパーのようにみえる。
したがって、パワーのあるクルマは急角度で通過するコーナーを苦にしないが、パワーのないクルマはエンジンの唸りとステアリングの据え切りでくたびれてしまうかもしれない。紅葉にはまだ早く同有料道は空いていた。450PSのc63は問題なく登っていくが、コーナー出口でパワーをかけると後輪がスキッド。その瞬間にトラクションコントロール装置が作動し過分の力を伝達しないようパワーを抜く。ただし、カウンターをあてないとならないほどパワーはかかっている。左コーナーは内側が深いカントがついているところがあり、そこでは左後輪が空転する。あっという間に頂上駐車場に到着。14時。頂上といっても8合目で、これから先はロープウエイ利用となる。駐車場は霧に覆われ視界はまったくない。料金所の案内で8合目は濃霧と表示されていたので、その通りであった。
同有料道は今年で開業50年。昭和40年から営業していることになる。半世紀もたてば、建設費償還が終わり無料開放されるのが普通だが、ここは地元のバス会社が経営している民間道のために有料道であり続けている。ちょうどずっとお金を取っている神奈川県の箱根ターンパイクのようなものである。
下り帰路はゆっくりと降りていった。また3に戻り岩木山神社からアップルロード(弘前南部広域農道)、県道127、国道7とたどり、当日の宿である大鰐に向かった。同ロードは文字通りリンゴ畑が広がるなかを走るが、鋪装が荒れており、快適農道というわけにはいかなかった。宿泊施設到着16時ちょっと過ぎ。
■全行程(GPS):約330km/最高高度(GPS):約1,257m
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