2015年12月11日

初冬の秩父、奥多摩の林道を巡る

 秋の行楽シーズンが終わり、初冬を迎えて、静けさを取り戻した秩父と奥多摩の林道群を走った。秩父のマイナーな関の入、中野や定番ともいえる奥武蔵グリーンライン、奥多摩の鋸山、風張といったすべて鋪装の林道である。走行日12月5日。使用車両Polo。

Polo

 西部池袋線・武蔵横手駅のほぼ正面で国道299から分岐する関の入林道が今回のスタート地点である。ここまでは関越道鶴ヶ島JCTから圏央道に入り、狭山日高ICで降車。埼玉県道347国道299と伝ってきた。都内をでたのが5時10分。同林道起点についたのが7時。空いた299を調子よく走っていると同林道分岐点を見落としてしまうだろう。それほど細々とした道で、299にはとくに標識もないからだ。


Polo

Polo

Polo
 ただ、林道起点には逆おむすび型でグリーン背景に白地で林道名を記した埼玉県特有の標識が立てられている。しかし、長い間の風雨・雪で穴があき、薄れた塗装でかろうじて関の入と読み取れる。同林道は結構な急坂なうえ1車線。天をつくようなスギの鬱蒼とした成林のなかをいくために、すでに日の出時間を過ぎているのだが、周囲は薄暗く、路面は湿っていた。ライトを点灯して登っていく。陽が差しずらい環境とあって気温は2度(東京出発時12度)しかない。高麗川に注ぐ関の入沢に沿って道であることが、林道名の由来となったのだろう。
 五条の滝なる、たぶん知るひとぞ知る名所らしき先の分岐を右に折れていくあたりがこれまでの日高市とこの先からの入間郡との境。ここで林道名称が変わる。中野線と。滝北に中野という字があり、そこからとられたのだろう。同林道は関の入よりは少し幅員が広く、陽が昇ってきているため、周囲は明るい。引き続き斜度のきつい箇所もある登り坂。


Polo

同林道は権現堂林道(起点)との接続点で終わる。権現堂林道で顔振峠に向かう前に鎌北湖に寄るべく狭く、折れ曲がる道を下っていく。緑色の湖面の鎌北湖は今からざっと80年前に造られた森に囲まれた農業用貯水池。春は桜、秋は紅葉が楽しめる、小さな行楽地でもある。また、ヘラブナ釣り場でもあり、湖岸道からは投針するためにしなった釣り竿の一部が見える。紅葉の見頃時期はとうに過ぎているが、色づいた落葉名残のモミジが日差しを浴びて輝いて見えた。



Polo


Polo
 顔振峠に向かうべく、走ってきた湖岸道を戻る。同湖西端二叉路に権現堂林道の標識がまたも現れる。こちらには起点表示はないが、紛らわしい林道である。種明かしをすると、こういうことらしい。鎌北湖から中野林道との接続点までは古くから存在した権現堂林道で、起点からは顔振峠まで林道を延伸する狙いで開発された、いってみれば権現堂新林道にあたると。新道は一気に道路幅員は4㍍に広がり、走りやすくなる。奥武蔵グリーンラインは毛呂山(まろやま)町県道30の鎌北湖入り口交差点から県道186を経て権現堂、奥武蔵2,同1などの連なる林道をたどり、定峰峠で県道11に交差するまでの全長30余㌔とされる山間道につけられた観光客を呼び込むためのキャッチフレーズである。この間、12の峠を巡る。道路幅員と軽快なワインディング性からすると、権現堂から定峰峠までが実際にはメイン走行ルートといっていいように思える。


Polo
 顔振峠(標高500㍍)着。7時52分。気温7・5度。同峠は奥武蔵2号線の途上にあり、峠の平九郎茶屋前は展望が効く。奥武蔵や丹沢山系の緑の山々の最奥部に唯一雪をかぶった白い富士山がぽっかりと顔を出していた。緑と白と青(空)のコントラストが鮮やかである。茶屋が置かれている理由がわかる景色だ。


Polo

Polo

Polo
 刈場坂峠(810㍍)までが同2号で、ここから白石峠(700㍍)までが同1号となる。刈場坂峠の駐車スペースの一角には峠名を彫り込んだ真新しい大きな木製表示板があり、眺望も効く。峠表示板は一時盗まれたか、壊されたかで、なかった。再掲出したことで新品に変わっていたのだ。峠ではアマチュア無線愛好家がパラボラアンテナを設置中であった。


Polo


Polo

 グリーンラインの峠は標高600~800㍍台が多く、高低差があまりない。山の稜線をアップダウンを繰り返しながら縫っていくのだが、クルマで走ると険しいワインディングロードという感じはしない。白石峠からグリーンライン終点の定峰峠(620㍍)までは奈田良線と林道名が変わる。定峰峠の茶屋前には8時46分に到着した。気温6・5度。


Polo

Polo

 埼玉県道11で、ふれあい牧場に向かう同361に乗り入れる。11は小刻みにコーナーが現れるダウンヒルが特徴。牧場は営業時間前で駐車場はガラガラ。361の二本木峠(600㍍)から先は幅員が狭くなる。


Polo

Polo

 釜伏峠経由で同82にでる予定だったが、登谷山麓付近でミスコース。しかし、361まで戻らず、そのままこのルートをたどっていく。狭道である。が、大内沢で県道294に行き着いた。事後調査で大内沢手前の上の貝戸という字があり、この集落の名前を冠した林道らしいとわかった。集落に降りていくところが下りのほぼ1車線急坂で、民家が左手法面上の台地に点在するというなかなかにすごいロケーションである。


Polo

Polo

Polo
 294から同30、国道140を経由して波久礼(はくれ)で荒川をはさんで140と並行する同8211国道299に。正丸トンネル出口直下の信号を左折、299旧道の正丸峠に向かう。路面には溝を付けた滑り止め措置がとられているものの、今となっては、狭い幅員。同時にくねくね曲がりながら高度を稼いでいる。落葉が路面に散乱し、ただでさえ狭い道がよけい狭く見える。速度はだせない。昭和57年(1982年)に1・9㌔の正丸トンネルが開通するまでは、この狭道を通るしかなかったのだから大型車同士のすれ違いには神経を使ったことだろう。10時30分、正丸峠着。気温10度。峠の茶屋は営業しており、店のおばちゃんが「正丸峠のステッカーあるよ」と売り込みをかけてくるが、お断りした。劇画「頭文字D」の舞台となった峠。茶屋では毎年ステッカーの新作を作り、お土産用に販売しているようだ。


Polo

Polo
 正丸峠を下ると合流する県道53松の木トンネルを抜けて同193に入り、軍畑(いくさばた)で国道411(青梅街道)にぶつかる。橋を渡り411と並行する都道45で古里で青梅街道にでた。この都道はダンプが多く、411の抜け道として利用しているらしいが、これを除けば通行量は少ない。


Polo
 次に向かうのは鋸山林道である。奥多摩病院手前の弁天橋たもとから同林道は分岐している。幅員3・6㍍、全長約13㌔の林道で北秋川渓谷を通る都道205に抜けられる。峠(944㍍)の駐車スペースまでの登りは荒れていた。ほとんど通行量がないせいか、スギの落・枯葉が道路表面の大半をうずたかく覆っている状態で、小枝も散らばっている。速度を少し上げると、タイヤが跳ね飛ばしたその小枝がクルマの底にあたり、パチパチと音を立てる始末。また、一箇所、鋪装が剥がれ、路盤の土が削り取られているうえ、雨水がたまった凹みさえある。止まりそうなスピードまで落とし、ゆっくりと通り抜けるほかない。やれやれ。峠にはA型バリケードが道路に置かれ、風で同バリケード下に落下したのだろう表示板には「通行注意」と書かれていた。ロードクリアランスのある4駆車やSUVなら問題なく通過できるが、クリアランスに余裕のない乗用車はなるほど通行注意ではある。


Polo

Polo

Polo
 しかし、峠から神戸(かのと)下りていく路面の状態に問題はない。スムーズに走れたが、道が狭いので速度は乗らない。神戸岩脇のトンネル前の赤井沢の清流には遊歩道が設けられている。


Polo
 同林道と都道205との交点で右折。205は行き止まり公道だが、205終点からも道は続いており、奥多摩周遊道の風張峠(1140㍍)にでることができる。行楽シーズンはわからないが、今の時期、205は行き交うクルマもまばらなローカルロードだが、都道が終わると幅員は狭くなるものの、走りづらいということはない。風張峠に行くには日向沢十字路は直進し、まずはひたすら「きのこセンター」を目指す。同センターを過ぎると、風張林道を告げる表示があらわれ、一安心。


Polo

 同林道は12~14%の檄坂で構成され、強脚サイクリストの間では著名らしい。この日も止まりそうなほどゆっくりとした速度でチャリを必死に漕ぐ人達4~5名が坂に挑んでいた。もっとも一番きついのはきのこセンター付近の17、8%らしいが・・・同林道はクルマでもずっと2ndをキープしないとて登れないほどで、脚力では確かにきついだろう。また、同林道は記憶では橋脚部一箇所にガードレールが備えられていた以外、その種のガード類はない。
 谷側に落ちればまず無事ではすまない。ただ、対向車とすれ違いできるだけの幅員は確保されているが、落葉で路面はあふれていた。行き止まり都道だけに一般車が踏み込んでくるケースはほとんどないはず。実際、クルマにはまったく出会わなかった。


Polo


Polo

Polo
 同林道には一つだけ絶景ポイントがある。連なる秩父の山々と天候に恵まれれば、高層ビル群のある新宿の街までが見渡せるのだ。肉眼ではその絶景ぶりがわかるが、カメラのレンズでは完璧に捉えきれないのが残念である。風張峠到着。駐車も転回も可能な広いスペース。しかし、奥多摩周遊道には鉄壁のゲートに阻まれ、クルマでは進入できない。えんじ色の滑り止め鋪装された周遊道をリッターバイクが快音をとどろかせて駆け抜けていくのを見つめるばかり。無情のゲートだが、徒歩やチャリには寛容でちゃんと通り抜けできるゲートが用意されている。


Polo
 Uターン。同林道を下り20533経由で14時40分頃、中央道上野原IC着。走行終了である。



Polo

Polo

Polo

Polo



■全行程(GPS):約351km/最高高度(GPS):1,149約m/燃費:15.5km/l
■フォトギャラリーはこちらです。