部分的に険道のある千葉県道269(木更津大鷲線)。館山道を木更津南ICで降り、269を大鷲に向けて走る。新し目の戸建て住宅が建ち並ぶ新興住宅地・八幡台まではセンターラインのあるゆるい登り坂の片側1車線道で、調子よく道なりに進んでいると高台まで続く同住宅街に誘導されてしまう。本線からは外れてしまうのだ。本線はゆるい右カーブの外側頂点付近から直線的に延びている狭幅員道である。しかし、信号はない。また、センターラインもなくなるものの、古くからの居住民の家々が建っている。
この民家群を過ぎると、幅員は極端に縮小。事実上1車線とかす。険道区間のはじまりだ。昼間でもほとんど空が見えないであろうほどスギの高木が林立する森のなかを登坂していくが、タイトコーナーはない。しかし、対向車との待ち合わせ用の待避スペースはなく、ずっと1車線である。二叉路にさしかかる。左は林道鎌倉4号で同33に抜けられるが、下りとなる右路が269である。この分岐路の標高は約110㍍で、八幡台の住宅街からはわずか50~60㍍の差しかないが、山の中にいるという雰囲気である。下りになると右手が開け、刈り取った稲が残る水田はうっすらと白い透明ベールに覆われている。霜である。気温0度(6時30分前後、東京出発時5時、6度、5時30分市川市4度)。ほどなくして幅員が2車線に広がり、大鷲で同92に接して269は終わる。険道区間の走行時間はせいぜい15分足らずでしかない。しかし、対向車に出会えば、どちらかが延々バックを強いられることは間違いない。
92を富津方面に進路をとり、今度は鹿野山を回り込む同164、163に。道路図でみると、それほどワインディングロードのようにはみえない164だが、尾車(びしゃ)から先は道幅が狭くなり、といってもすれ違い可能だが、小山岳路といった趣きに変わり、路面も荒れてくる。チャンキーフーズ農場前は鋪装が剥がれてしまったらしく、短いが凹凸の大きいダートにさえなる。白鳥神社近辺に降りる163と164との交点はぐるっと270度鋭角的に右に周り込むのだが、一回では回り込めず、切り返して163に入る。よくしたもので、切り返し部分には車一台分の空きスペースが設けられ、ここにノーズを差しいれて163に方向転換できるように造られている。休日、163は白鳥神社側、つまり同93からの時間帯制限のある一方通行路となる。
展望台着。雲海漂う九十九谷を通して昇ってくる朝日を捉えようと数人の愛好家がカメラを向けているのは教科書通り。6時50分が日の出だが、時間は7時ちょっと過ぎで、残念ながらシャッターチャンスは去っていた。展望台から白鳥神社側までは下りの急坂が続くが、走りにくいということはない。同神社からやはり下り坂の93や92などを経て久留里方面に向かう。国道410の馬来田から県道168で高滝湖にで同173、172で大多喜を目指す。173はゴルフ場間を抜けるワインディングロード。高滝湖の加茂橋先から登りが始まり、加茂GCあたりから下りだし、172の交点から先が急坂となる、アップダウンの激しい道だ。加えて172は途中から1・5車線幅やっとの道に変わり、くねくねと山肌を回り込んでいく険道となり、マグレガーCCの入り口に至ってやっと2車線に復帰する。
172に沿う大多喜町内を抜ける。9時、気温6度。城下町であった大多喜には江戸時代を偲ばせるなまこ塀や木造の古風なつくりの商家が立ち並ぶ一角がある。町では公共放送の「大河ドラマ」に城主であった本多忠勝らを取り上げてもらおうと推薦活動をしていて、それを示すノボリが立てられている。大多喜もご多分に漏れず人口減少に悩まされている。同ドラマの舞台となることで観光客を呼び込む町おこしを狙っているわけである。
172は国道297に接続。297、国道465と伝って県道177に。田代から西隣の178に通じる道路を使って麻綿原高原、内浦山県民の森を経て国道128に抜ける。田代から178までの道は伊野部という集落がでてくるまでの区間はほぼ1車線。山林のなかを登り詰めていく林道ふうの道である。しかし、対向車さえなければ、フラットな路面で走りにくいということはない。たぶん、町道伊野部当月川線だろうとおもう。戦後になって造られた道である。
178で会所トンネル直前でアジサイで知られる麻綿原高原に向かう市町村道に入る。路面はバンピーだが、2車線あり、ちょっとしたワインディングロードだが、途中から狭く、コーナーの多い、上り下りしながら高度を上げていく山道に変わる。路肩には花までも茶色に変色した昨年のアジサイが押し花になったようにたくさんみられる。庭木としてのアジサイは花が終わった時点で、思いっきり短く剪定するが、ここでは放置プレーである。狭い山道があるため、アジサイ開花期には会所トンネル側からの一方通行路にしている理由がわかる。内浦山県民の森へは奥谷林道を経由していくことができる。
同林道は2車線。高原からだと、基本的に下り路である。急坂、ヘアピンが続く箇所があるうえ、路面に大きな段差付。段差に落ち込むと強い衝撃を受けるため、あまり走りやすい林道とはいいがたい。むしろ、県民の森から128に至る県道285のほうがダウンヒルを楽しめる。海岸線を通る128で県道89に向かう。途中鴨川シーワールド先の前原横渚海岸の岸壁から釣り人が糸を垂れていた。おだやかな青い海が広がる。
曽呂十字路で89に。ゆるいコーナーが小刻みに出現する妙にくねくねとしたカントリーロードの89。その路肩や法面には白い水仙の花が咲き誇っていた。また、水仙とともに1㍍程度の高さのフェニックスが植栽されている法面もあり、89を観光道路に衣替えしようという試みのようである。道路沿いに曽呂尋常小学校分教場跡地の案内板。明治7年開校。1967年閉校した木造の分教場は、ガラスが割れているなど廃墟の雰囲気が漂うものの、ピンク色のもう一棟はこの地区の集会所になっており、しっかり管理されているようである。同校には曽呂出身の元大蔵大臣・城西大創始者と郷土の英雄、水田三喜男氏(故人)が小学生時代に通学していたそうである。
89から国道410を南下。410に面しているといっていい安房中央ダムに寄る。堤高32㍍、堤頂長110㍍の小さな堤体は草むしていて、緑の壁といった景観のアース式灌漑ダムで、堤体左下には一軒の民家が立地する。堤頂部は通行可能で、ダム湖を見下ろすと、水が、ない。堆積砂がこんもりと湖底を埋め、それを除去するパワーショベルが作業中であった。同ダムは2006年から改修工事に入っており、水需要の少ない冬場に水抜きし、湖底の砂をさらう作業に入るのだ。
410から県道258に入り、今度は増間ダムに寄る。安房中央ダムと似たり寄ったりの小規模ダムだが、こちらは重力コンクリート式。増間林道をたどってダムに近づくが、用途が上水道用のためか、堤頂部はクルマはおろか徒歩でも立ち入れない。同林道はダムを境にそれまでの鋪装路からダートに変化する。この林道は七ツ滝を巡っているのだが、ほとんど車両の往来はないようで、進むにつれ路面の状態は悪化。岩石が露出したガレ場もあれば、丸太棒サイズの太さのマツの枯れ木さえ転がり落ちている場面もある。それらを避けるためにステアリングを右に切り、左に切りしてゆっくりとしか前進できない。2キロも進んだろうか、T字路に突き当たる。左は路面一面に草が生えるなど、みるからに廃道ふう。右は行けそうだが「小崩落多数で車両通行止め」の表示板と坊滝(七ツ滝のひとつ)の進行方向を示す案内板も・・注意板は最近設置されたとも思えないものの、ここで走行をやめ、Uターンし258まで戻った。
258は88に突き当たり、88を北上し、再び258に入る。この区間の88は258と供用ということか。258を富山に向けて走り、富津館山道の高架橋が見えてきたら速度を落とし、左手を注視しながら走る。258から直角に分岐する道を探すためだ。あった。原田山林道の入り口を発見。林道名を示す標識も立つ。入路。山間の民家がなくなると、道は事実上1車線になる。登り坂である。クルマ1台分の幅員しかないトンネル2本を抜けると、岩婦温泉に着く。だが、温泉館への進入路にはロープが張られ、営業停止中のよう。
同温泉はその道の通にはよく知られた沸かしの硫黄泉だが、2軒の宿とも閉泉とネットにはでている。3本目のトンネルを抜けると、同林道も終点が近くなる。しかし、同林道は木の根林道に接続し、国道127に抜けられる。木の根林道は林道臭はまったくしない。たっぷり2車線道で富津館山道との併走区間のある、結構なスピードの乗るダウンヒルが持ち味である。ただ、同林道は生活道として機能し、それなりに通行量もある。
木の根林道の東側にある快走県道185。しかし、道の駅「おおつの里」先から一転、幅員が一気に狭まる。コーナーも多発。185は険道に変貌する。この時季、お決まりの路面には落ち葉が散乱、道幅はよけい狭く見える。また、たいした標高ではないのだが、山深い景観となる。ただ、眺望は効かない。すれ違いできなくはないものの、十分に減速してお互いが行き来するほかない。当日、スピードの乗りやすい下りゆえ、それなりに飛んできた対向車、HUSTLER(SUZUKI)と遭遇。「まさか対向車がくるとは思わなかった」というギョッとした顔つきでHUSTLERのドライバーは、コーナー寸前で急減速。こちらも急減速し、事なきを得た。185脇には産廃場があり、当日、4㌧トラックがここから88にでるべく、ゆっくりと慎重運転していた。185は88接続点で正面に消防署があり、88から185に入る目印になる。
88を北上。89との交点を越えて、184で佐久間ダムを目指す。184はなかなかのワインディングロードでどんどん下っていく。途中、奥山経由で同ダムに向かう、たぶん町道に入る。2車線登り坂を進んでいくと、ほぼ頂点で左手の民家に行く小径が分岐する。この小径の日当たりのよい左周りヘアピン内側に3~4分先の白い花をつけた梅の木がみえた。開花したばかりの紅梅の木も。町道は佐久間ダムを見下ろすかたちで、同ダムに架かる橋のたもとに行き着く。同ダム周辺は水仙郷で昨年12月中旬から1月下旬まで水仙祭りを地元鋸南町が開催している。暖冬とあって満開で日差しの強い斜面ではすでに花が散りだしていた。
同ダムから34に抜け、横根峠で182(通称もみじ通り)に。182は最初こそ幅員が狭いが、ほどなくして2車線の快走ワインディングロードになるのだが、分岐する鹿原(しっぱら)林道に進路をとり、上総湊にでることにした。同林道入り口には標識が掲出されている。同林道の距離は短く、林道らしさは薄い。生活道のようであるが、山々が望める眺望場所もある。道と並行してガードレールが埋め込まれ、大型車の通行止め措置としている。しかし、乗用車は問題なくすり抜けられる。同林道終点には今日設けたといわれたら信じてしまうほど真新しい林道標識が立っていた。
左は房総アルプス登山道入り口の案内板。歩きでしか入れないか細い道。ここは当然、右に行くほかない。山道を想像していたのだが、実際は立派な生活道で民家もすぐに現れた。上総湊で国道127、163とたどり新舞子海岸に。
当日は好天のうえ風もほとんどなく、海は凪の状態でおだやかな波が規則的に浜辺に打ち寄せていた。気温は12度まで上昇。ついでに東京湾観音にも寄った。
日産ブルーバードが登場した1959年建立というから半世紀を超えた高さ56㍍の白い観音像。エレベーターがなく、階段を324も昇らなければならないので、像内展望台はパス。しかし、地上の土産物売場をいうか休憩所というか、その横の展望台から横浜のランドマークタワーまで一望できたことで満足。この休憩所はメラミン化粧板を天板にした食堂テーブルといい販売商品といい、所内の雰囲気が今では失われつつある昭和30年代の観光地の醸し出すレトロ感覚が、またいい。ここで今回のドライブは完了である。15時頃、富津中央ICから帰路についた。
■全行程(GPS):約409km/最高高度(GPS):約337m
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