2016年9月18日

中秋の栃木路

 秋の訪れを感じる一日、那須、板室、塩原、湯西川、川俣、日光と栃木の山岳県道を巡回した。まだまだ紅葉には早すぎる時季とあって、どこも交通量は少なく走り目的には適していた。走行日9月9日。使用車輌Lutecia。

Lutecia

 東北道那須ICから栃木県道1768とたどり、最初の訪問地である那須岳(茶臼岳、1915㍍)を目指す。東京発午前3時15分、気温24度。那須IC着5時30分、同18度。17沿道には観光地らしくレストランなどが並んでいるものの、68に入ると高原ローカルロードらしい雰囲気に変わる。

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 68は緩くアップダウンを繰り返しつつ大きなスラローム区間があり、走って厭きない。周囲には茎葉がトウモロコシに似た背の高いソルガム(飼料用作物)畑があり、牛舎だろう畜産農家も垣間見える。68には305と交差した先でこれまでの2車線道から突然、1・5車線程度に幅員が狭まり、かつややタイトな下り部分を抱える。周りはいきなり森の中といった趣で、道路際の樹木が覆い被さり薄暗くなる。距離的には1㌔程度と短いが、ちょっとしたワインディングである。道路図でもこの区間は道幅が狭く描かれている。

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 しかし、これを過ぎるとまた平坦となり稲刈り前の黄に色づいた稲穂が垂れた水田を望みながら走る。68は東北道白河IC手前で国道4に合流するが、その直後の大清水交差点を左に折れて社会福祉法人大陽の国に至る、ストレートの長い広域農道らしき道を経て国道289に進入する。白河高原CCの西端を横切るかたちで、289から分岐する栃木・福島県道290に入る。同CC分岐点の標高が約800㍍。ここから那須岳ロープウエイ上のクルマで行ける最終駐車場の約1500㍍まで延々と登っていく。

 290は1978年~2008年8月末で無料化されるまで那須甲子有料道と称していた観光道である。栃木県道305との交差部ぐらいまでの間の290は緑の森中を行く快適なワインディング路だが、同交差部から先はタイトコーナーが多く出現する。そのうえ、道路補修にともなう凹凸も目立ち、硬めのサスであると、少しばかり跳ねる。シルバーの鉄板囲いの一部が解放されていた。2000年頃廃業したとされる白河高原スキー場跡地の入り口であった。リフトはしっかり残っているが、スキー場建屋はお決まりの窓ガラスがほとんど破損し、もう廃墟さながら。建屋前の広い砂利を敷いた駐車場の一部では手入れされないために自然に生えのであろうススキの穂が秋風に吹かれ、ゆらゆらと揺れていた。

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 290は栃木県道17にぶつかって終わる。ここから那須ロープウエイ駐車場まではさらに登るが、眺望も開けてくる。この17は1965年の開通から2009年9月に無料となるまでの期間、ボルケーノハイウエイ(那須高原有料道)と呼ばれた環状道。同駐車場手前は道路脇に生け垣のようなクマザサが茂り、幅員も狭いのに加え、連続するタイトコーナーをクリアしつつ登り詰めていく。行く手には那須岳とその9合目まで渡る東野交通経営のロープウエイを行き来するゴンドラが見える。

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 17の終地点である駐車場着。午前7時、気温18度と涼しい。しかし、長く車外にいると肌寒い。駐車場はバス用を除いて満車状態。登り口があるため早くから登山者が押しかけているのである。白い雲が流れているものの、青空が広がり、登山日和といっていい。

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 ここからは那須湯本、板室、塩原、湯西川、川俣と温泉地を通過つつ、清滝で日光宇都宮道・東北道を経て帰京するルートを走る。ロープウエイ駐車場からは下り坂。登りとは違うもう一方の環状路を降りていくが、狭いタイトな道に登山客のクルマがどんどん上がってくる。那須湯本が近づいてくると、ウインドウをわずかに開けた車内に硫黄臭が入り込んできた。早朝なのか人気のない温泉街を抜け、新那須で板室に向かう栃木県道266入路。道は空いており、対向車にはほとんど出会わない。266は樹林のなかを抜けていく道で適度にアップダウンがあり、快適に走れる。道路脇にある遊具・ゲームソフトなどを手がけるコナミのスーパーキャンパスなる巨大施設付帯の白い3基の風力発電機のプロペラがゆっくりと回転していた。

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 那須湯本の温泉街と比べると、ぐっとスケールの小さい板室温泉を横目で見ながら抜けた先に、2012開園の深山(みやま)園地への標識がでてくる。予定したルートではないが、かつて計画されたが、頓挫した塩那スカイラインの一部にあたる道路であることから右折し、同園地に向かう山岳路(266と369の一部供用道)に乗り入れてみた。

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 9㌔先で行き止まりとなるが・・・山中を行くコーナーの続く登り坂ワインディング路で、山しか見えないものの、視界も効くが、交通量は皆無。同スカイラインの塩原側の終点にあたる土平園地までの266は広幅のダイナミック・ワインディング路で270度は転回しているヘアピンなどがあるのに比べ、那須側は幅員こそ2車線あるが、そこまでの豪快道ではないし、幅員も狭い。終点1・6㌔手前から幅員縮小との告知が出てくる。1・5車線あるか、ないか、であった。道路は閉じられたパイプゲートで唐突に終わりを迎える。深山園地駐車場到着。右カーブ上に6台ばかり置ける小さな駐車スペースが設けられているだけの寂しい場所であった。ここから先は未舗装路。ゲート脇から入れる遊歩道となり、600㍍ばかり歩けば、本当の終点となる。途中には展望台が設けてあるとの表示が。「熊注意」とあって各地で熊出没情報が活発な今年、寂しい山中の遊歩道を歩くのはやめておく。

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 行き止まりの道ゆえ再び同じ道を戻り、369から長閑なカントリーロードの30経由で塩原を通る国道400に。400は塩原ダムを越えると、箒川に沿い、潜竜峡など道路下100㍍ほどもありそうな深い渓谷が続き、しぶきを上げる水流は速い。日塩もみじラインとの分岐を越え、400は国道121に合流する。121を南下、五十里湖から湯西川に向かう栃木県道249に入る。

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 湯西川の温泉街までの249は道幅の広い快走路である。湯西川ダム建設にともなって造られた付け替え新道で、眼下のダム湖に通行できなくなった狭い旧道がうねうね通っているのを見ることができる。しかし、同温泉を過ぎると、249は道路事情が一変する。徐行しないとすれ違いに困難を生じる、狭いくねくねとした緑に彩られた景観の山道と化すのである。これが249の旧来の幅員なのだろう。4㌧塵芥収集車と対向し、バックしてやり過ごす。くすんで古ぼけたコンクリート欄干の小橋の竣工年をみると、昭和35年(1960年)とあった。249は翌36年に県道に制定されているので、これを見越して橋を架け替えたのだろう。この道の前身は恐らく林道である。249は栃木・福島県道350に突き当たるが、南下すれば、そのまま249である。川俣に向かうには南下し栃木県道23にでないとならない。350との交点からの249はフラットな道となり、幅員も広がる。ずっと23まで下り坂である。山中であることには変わりはないが、周囲はだんだんと開けてくる。満水状態の小さな土呂部ダム脇をかすめれば、23の交点まではまもなくだ。

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 23に入る。23はほぼ2車線のローカルワインディング県道で瀬戸合峡は2本のトンネルで抜けてしまう短距離バイパスが高速快適路である。ローカル道からいきなり高速道に入ったような感じになるバイパスだ。川俣から奥鬼怒林道を利用し、国道120に向かう。

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 同林道は結構な距離があるほぼ2車線ワインディング山岳路だが、夜間通行はできない。山王峠(1739㍍)までは登りで、これを越えると下りで光徳牧場120に突き当たる。同林道では枯葉や小枝が落ちており、にぎやか。しかし、これは林道の定番ともいえる路面状況である。季節的には、こうなるのが少し早い気もするが、秋から冬にかけては落葉樹の葉が盛大に散る。路肩にはさらに枯葉が堆積することになりそうである。走行当日は光徳側から川俣に抜けようとする多数の主にオンロード大型バイクと出会った。バイクにとってパワーをかけるとスリップしやすく、決して走りやすい路面環境とはいえない。

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 また、砂利を積載した10㌧級ダンプが、黒いディーゼルスモークを吐き出しながら喘ぎ、喘ぎ登っているところに追いついた。ダンプを抜けるだけの幅員のある箇所はなかなか見つけられない。ダンプの後ろについて極端な低速走行を強いられるのを避けたく、路肩に7分間クルマを止め、ダンプとの間を開けた。プリウスが対向車線を走ってきた。どこかでダンプと離合できる場所があるとみて発進。ほどなくして戻ってくるダンプと遭遇。たまたま幅員があるところで出会ったので、すれ違うことができた。ダンプは左コーナー道際に広いスペースのあるユンボの置かれた場所まで砂利を運んできたのだった。当日は休工していたが、道路補修箇所があり、そこで使う資材だったようだ。山王峠は眺望は効かず、切り通しである。路肩にクルマが数台駐車しており、登山者らしい。光徳牧場に近づいてくると、大きなブナが林立し、土床には一面クマザサが繁っている。牧場隣接のブナ林に日光が差し込んだ木漏れ日が素晴らしい光景をつくりだしていた。

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 正面、戦場ヶ原の120を清滝に向けて走る。中禅寺湖のキャンプサイトのある駐車場は満車。久しぶりの晴れ間の土曜日とあって、どっとひとが繰り出しているのだろう。帰路の混雑を避けるため、12時30分にさっさと日光宇都宮道に乗り入れ、現地を後にした。東京まで渋滞なし。

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■全行程(GPS):約601km/最高高度(GPS):約1,718m
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