2016年11月25日

紅葉残照の秩父山路


秩父の林道やこれにアクセスするための国・県道をドライブした。普通に走行できる林道に加え、ひとつだけガレた林道も。初冬を迎えているなか、多くの設定ルートで素晴らしい紅葉に巡り会った。走行日11月20日、使用車輌Lutecia。

Lutecia

 まずはいったん埼玉県飯能市の東吾野にでて再び有馬ダムに戻ってくるルートを走る。中央道八王子ICから都道伝いに都・埼玉県道53にでて有馬ダムへの分岐点に。同IC着午前5時、気温7度(東京出発4時30分、10度)。この分岐を通り越した個人商店脇で53を右折、仁田山峠に至る林道下市場名栗線に入る。同林道は10月にも走っており、先月に続いての訪問となる。こちら側は同林道終点部にあたるが、林道名がかすれて読み取りづらい。右折部はかなり広い。地元民が駐車場として林道を利用しているらしく、以前にも置かれていた白い乗用車が今回も止められていた。登り坂で同林道ははじまる。393㍍標高の仁田山峠に至る手前の植栽桜群はすっかり葉を落とし、枝の隙間から夜明け直後の薄暗い空が覗く。同林道には大きな段差があり、その旨知らせる告知板も立てられているため、この段差部に気を付けていれば、走りにくいことはない。一箇所視界の開ける場所があり、そこでは白い雲海に浮かぶ黒い山波を臨めた。

Lutecia

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 よくいえば水墨画の趣き。同林道にはもうひとつ、天神峠(350㍍)を通過するのだが、仁田山峠同様に峠と気付くことは恐らくなく、アップダウンを繰り返しながら狭いT字路で八王子林道に行き当たる。左折すると竹寺に向かうが、右折し埼玉県道350(南飯能線)に。

 350沿いのバス停中藤で、林道平坂飛村線への左折路に入ろうとすると、入り口に通行止めの標識が掲出されていた。行けるところまで行こうと同林道に入線するが、出会った樫久保集落の方に「通れませんよ」と忠告された。道路掘削にともなう2017年1月末日までの通行止め。道が掘られているなら通り抜けは難しかろう。忠告に従って350に戻った。先の地元民によると、子の権現に向かう林道栃屋谷線を利用すれば飛村に行けるそうだが、私達は350を西に進み飯能CC西端脇をかすめて東吾野に抜けられる道を選択。この道の入り口には林道長尾坂野口入線の標識が・・・さっそく入線する。同林道に入ってしばらくは右手に住宅街がみえるが、それを過ぎると林間路に変わる。この時季、林道特有の両路肩部に落ち葉が積もり幅員が狭くみえるが、すれ違いできるだけの道路幅は確保されているうえ、路面もフラットで走りやすいし、後半部では適度な屈曲性も加わって距離こそ短いものの、なかなかに楽しめる林道であった。

Lutecia

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 同林道はY字路に突き当たると、東吾野駅までわずかの距離となる。ここからは右手に西武線、高麗川をはさんで国道299が通っているが、西武線に沿って吾野方面に続く林道平坂飛村線を通過していくことにした。高低差のひじょうに少ないほぼ2車線の平坦林道で左側は林。吾野変電所のところで国道299に入り、吾野駅前、法光寺前を通って再び299に。法光寺の墓所は山の中腹に階段状に造られ、墓標が林立する壮観さ。同寺サイトによれば、聞いたことのない墓所案内用のゴルフカートに似た専用車を用意しているという。299からみる山に墓石がずらっと並んでいる様は、この寺とわかるメルクマークである。

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 西吾野駅先から県道395(南川上名栗線)を抜けて53の有馬ダム分岐までを走った。395は天目指峠(482㍍)を越えていく、スギ林のなかを通るワインディングロードである。幅員は1・5車線程度で、峠前後はとくに狭路となっているが、子の権現に至る林道子の山線を過ぎた上久通(かみくずう)までは民家がある。峠前後はタイトコーナーが続き、この種の道を走り慣れているドライバーであるなら、おもしろいだろう。395はその西側に位置し山伏峠を通り、正丸トンネルで299にでる53と並んで、東京近郊のワインディング県道としてよく知られているが、395のほうが交通量は少ないようだ。

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 395から53の有馬ダムへの分岐を曲がり同ダムに向かう。下市場名栗線から東吾野を巡り、再び、この分岐まで戻ってくるのに1時間20分程度かかった。7時47分、気温7度。法面の一部にイラストの描かれたダム堰堤までの道沿いのモミジが赤く染まっていた。堰堤から名栗湖南岸をいく。北岸の山の緑のなかに紅葉が点在しているのを見ながら走ることができた。北岸を通ると、眼上の山をみるのは難しそうで、紅葉時期は南岸をいくとよいだろう。ダム湖の終わりで南岸、北岸両道が合流、一本となった道を進んでいく。観光釣場前に林道広河原逆川線の標識が立っているが、実際には北岸道も林道の一部である。釣場駐車場には解除時期不明の通行止め表示板が置かれているものの、行けるところまで行く。登り坂で途中まで逆川沢に沿って林道は走っている。


有間ダム

 駐車場から有馬峠(927㍍)までざっと600㍍ばかり、くねくねしながら標高を稼いでいく。落葉がたっぷり降り注ぎつつある林道路面。前日の雨を含んだ落ち葉はひじょうに滑りやすく、時折、コーナーでリヤが軽くスライドするのもしばしばのこと。山肌は針葉樹の緑を背景にところどころ落葉樹の紅葉塊が散在し、緑の部分だけ浮き上がったように立体感ある景観を見せていた。8時28分有馬峠着、気温7度。問題なく峠まで通行できた。工事施工中および落石の危険性を通行止めの理由としているが、走行日は休日だったため工事は休工していておかしくないが、とくに工事しているような箇所もうかがえなかった。落石の恐れは林道ではつきものだし・・よくわからんが、とにかく峠にはたどり着いた。峠にはダート林道日向沢(ひなたざわ)線が分岐しているが、チェーンゲート規制で進入不可。この林道はほとんど廃道化しているとされる。

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 峠からは下り。秩父市側から峠までは通行できるようで、紅葉を目にしながらどんどん下っていく。林道途中で大河原谷を通る。この谷と逆川沢に沿うことが、大河原逆川林道の名前の由来となったのだろう。

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 県道73(秩父上名栗線)続いて浦山ダム先で国道140に接続。奥秩父もみじ湖方面に向かう。目指すのは金山志賀坂林道である。140は順行方向で通行量が多かった。しかし、荒川沿いの140はモミジだろう、紅葉が途切れなく続いていた。巨大ループ橋を経て、県道210の中津峡を通過する。210に入るや交通量は大きく減少し、中津峡の連続したモミジの紅葉を眺めながめつつ、とりたてて特徴のない雁掛トンネルをくぐると林道金山志賀坂線への道となるが、とりつきは上野大滝林道である。10時14分、気温8度。上野大滝線入線。ここから行き着く先の志賀坂峠(780㍍)まで延々と登っていく。石灰石を採掘しているニッチツ鉱山の崩れつつある廃墟化した従業員宿舎跡過ぎから金山志賀坂線に変わる。同林道もモミジの紅葉が素晴らしい。一瞬で通り過ぎてしまうのだが、紅葉のトンネル風の景色もある。半面、同林道路肩部は落ち葉の山。加えて、同林道は凹凸路面が多く、荒れており、それを乗り越えるとクルマが跳ねる。八丁トンネル駐車場に多数のクルマやバイク。紅葉か、登山に訪れた人達が少なくないことを示していた。

Lutecia


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 299の志賀坂トンネルを抜けて、少し先の右コーナーに分岐路。これが林道二子山線の入り口。通行止め表示がなされているものの、ゲートは設けられておらず、表示板脇から入線する。この林道も行けるところまで行く所存。最初は鋪装だが、すぐにダートに変化した。速度を落とす。一面に落ち葉が拡がり、その下にある路面状態が光線の加減もあってよく見えないからだ。だんだん路面が荒れてくる。雨裂もある。クルマが上下動する。ボンネット直先の路面を慎重に見極めながら進む。コーナー中心に部分鋪装されてくる箇所に来ると、少し安心する。そんな繰り返し。

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 進路に子供の頭大の落石数個。降車排除。土砂崩れ。セメント吹きつけ処理された十数㍍上の法面から土砂が落ちて、谷側に向けて斜めに道路を塞ぐ。降車。崩れを判断する。通り抜けできそう。歩くような速度で土砂を乗り越える。ガシャとフロアを打ち付けた。深さ30㌢はゆうにある轍掘れだろうか、長さ20㍍弱に渡る。林道全行程の3分の2は走破してきたはずで、土砂崩れ箇所などを戻る気にもならない。突破することに決めた。轍には丸太を押し込んで埋め込んでいるが、まだ深く、乗用車ではこれを利用できない。轍をまたいでゆっくり、ゆっくり、なんとかクリアした。深い水たまり。越えた瞬間にまたしてもフロアからガシャという音。凄い林道だ。通行止めしているのがうなずける。しかし、同林道は開けた部分が多く、景観性には富んでいる。西に白い直方体に削られた山が遠望できるが、これは秩父太平洋セメントの叶山鉱山(石灰石)である。同鉱山は群馬県にあるが、鉱石はベルトコンベヤで埼玉県秩父市の同社工場まで運ばれており、コンベヤは林道直下を貫通している。

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 林道下小越線との分岐路(終点部)。鋪装路で下っており、国道462の下小越集落まで続いている。ここでエスケープすることもできたが、二子山線をすべて走りきることにした。路面状態が少し改善したかに見えたが、それも束の間、また荒れたダートに。同林道は林道高萩線の起点で終了する。こちら側にも通行止めの表示板はあるが、脇から簡単に入れる。こちら側が二子山線起点部であった。距離20㌔と記載されている。ただ、志賀坂峠下から起点部までの区間距離は20㌔はない。通り抜けに1時間を費やしており、平均速度は20㌔にも達していない。同林道は2014年頃全通したとされる。起点、終点両部から髭のような線が延びているだけで、これ以外、少し古い地図だと道として描かれていない。実際、16年版のカーナビには反映されておらず、ずっと地図にない道を走ってきたのだった。しかし、ロードクリアランスの低い乗用車で同林道を走破するのは限界だという結論である。

Lutecia

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 同林道終点から462までは鋪装路。鋪装道のありがたみを実感する。462から299に入り、当日、最後のワインディング走行である塩之沢峠(1020㍍)を越え、下仁田にでる。299に入って平原から同峠に向かう群馬県道45(下仁田上野線)までの区間は、たぶん299の旧道にあたる道をたどった。

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 299に比べ幅員は狭い。しかし、交通量は少ないうえ、地名ごとの民家をつなぐ静かな雰囲気の道で、沿道沿いに紅葉に臨むむことができた。45入路。やまびこ莊(国民宿舎)前から旧道に。カラマツは落葉しきっていた。交通量が多いとは思えないが、路面の落葉は路肩部に限られ、走行部にははみでておらず、走りやすいワインディング環境だった。峠から御荷鉾林道に入れるが、下仁田に向けて45との合流点まで下る。途中、白い噴煙を上げた浅間山とその東に妙義山を仰ぎ見られるポイントで休憩。

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この道も緑の中に浮かぶ紅葉が続く山並みを遠望した。日差しが指しにくいらしく道路中央には緑のコケの帯が続いており、これにのってスライドしないよう走る。45、国道254で下仁田ICから上信越道に入り帰京。13時45分、気温19度。高坂SAのGSで洗車し、二子山線でボディ、ホイールハウスにとりついた落葉混じりの土垢を落とした。東京までいっさい渋滞なし。

Lutecia

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■全行程(GPS):約410km/最高高度(GPS):約1,234m
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