2019年8月13日

気儘な羅針盤:EDR/Event Data Recorder

 アクセルとブレーキの踏み間違えによる悲惨な事故が多発してる。航空機なら事故時のデータがフライトレコーダー(FDR)に記録され客観的な原因究明に役立ってるのに、フライトレコーダーのクルマ版にあたるEDRって認知されてないよね。

EDR
 EDR (Event Data Recorder)

 ✔ ブレーキを踏んだけどブレーキが効かなかった!
 ✔ アクセルが戻らず暴走した!

 そんな報道がメディアから聞こえてくる。
 んな、バカな!、重要保安機能のブレーキがそんな簡単に効力失うワケないよ。ハードウエアが悪いのか?、単なる操作ミスなのか?、航空機のようにフライトレコーダー載ってれば簡単とは言わないけど検証できるのに!

 あるよ!
 あなたの相棒がトヨタ製で2012年以降の新型車なら、EDR(Event Data Recorder)と呼ばれるクルマ版フライトレコーダー載ってます。おっと、ご心配なく、トヨタ車ぢゃなくてもエアバック装備されたクルマならほぼほぼEDRが載ってるようです。

アクシオの取説

■ What’s EDR/Event Data Recorder

 もともとEDRはエアバック展開を検証するためのロガーとして実装されました。エアバック普及期、衝突したのにエアバックが開かなかったなど信頼性が疑われ、訴訟を起こされることも少なくなかった。メーカーはハードウエアの正当性を証明する手段として、エアバック展開5秒前からシートベルト装着の有無など最低限の状況をデータとして残せるようにしたのです。そんな生い立ちを持つEDRゆえACMと呼ばれるエアバック コントロール モジュールに搭載されるのが一般的、アメリカではEDRに記録するための規制もあります。

 メーカーの提出した解析資料でハードウエアの正当性は確認されたのですが、データ解析や解析した結果を見える化するのも同じメーカーぢゃ信ぴょう性に問題ありとなったのです。そのため、現在は公平性を担保するため公的機関、保険会社や第三者が記録したデータを抽出、解析し見える化しています。

 EDRの記憶容量増加にともない記録するデータのクオリティや種類も増え、速度はもちろんブレーキ操作量やアクセル開度に加えステアリング操作量や加速度など60種類にも及ぶデータが記録できるそうです。ここまで詳細に記録できれば、当該事故の完全シュミレーションできちゃいそうですね。

 それなのにメディアは、警察のリークを鵜呑みにし、「アクセルが戻らなかった!」「ブレーキ踏んだが効かなかった!」と、証拠もないのに、クルマ側に原因があるかのような報道に終始してる。その上、最終的にクルマ側の責任ぢゃないとわかっても、そのことを報道しなかったり訂正しなかったり。結果、プリウスの悪いイメージだけがみなさんの記憶に積み重なっていく。

■ What’s CDR/Crash Data Retrieval

 EDRからデータを取り出すための専用ツールがCDR(Crash Data Retrieval)です。EDRに保存されたデータを読み出しクラッシュ情報をCDRレポート形式で吐き出します。例えば同じメーカーでも記録されたデータを抽出するためのパラメーターが異なり、時代とともにパラメーターの種類も増え、より詳細なデータが抽出できるようになりました。

BOSH製CDR

 EDRから抽出したデータ分析は大変です。複雑かつ高度な制御システム知識だけぢゃなく、事故調査に関する知識や経験、物理学、運動学の知識など高度で広範なスキルを必要とされる。数値の羅列を最終的に見える化するのは自動ぢゃなく人間のスキルなんですね。