今年初めて開花した桜を見たのは、上総湊から5㌔ばかり内陸に入ったR465号線のk88と交わる関尻交差点近くの東大和田近辺であった。
館山道木更津北ICからk33を経て鹿野山の山道を走り終えて白浜に向かうべくR465を走行していたとき、畑の連なる左前方の個人住宅斜面にピンクの花を咲かせた河津桜が視界に入ったのである。
桜と富士山に異常なまでの関心を示す民族の一員としての例に漏れず、桜の近くに寄れる畑道にゆっくりとクルマを乗り入れた。
幹の細い若木だが、日差しをたっぷり浴びられる日当たりのよいロケーションゆえにほぼ満開に近い状態で5本の桜は咲き誇っていた。
南房総には今年も春がやってきているのだ。
クルマともども写るようファインダーを覗く。
関尻からk88入路。低山と畑と時折民家を眺める典型的カントリーロードである。東京湾沿いにR127(内房なぎさライン)と富津館山有料道があるため、内陸のk88は交通量も少ない。
このk88際に戸面原(とづらはら)ダム(富津市豊岡)がある。小さなダムで普通に走っていたらそのまま通り過ぎてしまうだろう。
このダムは1978年に完成した灌漑用水用のもので、発電設備はない。ダムは一般には開放されておらず、駐車場もなければ、ロックフィル式堰堤にも立ち入れないようロープ規制している。
k88からk258が分岐する上滝田近辺でk88沿いにコンクリート製鳥居が右側に見えてくる。白山神社である。
その手前に大きくはないが黄色の花を咲かせた菜の花畑が・・・
菜の花は房総の春を告げる象徴的な花である。館山寄りの房総フラワーラインは沿線に植えられたこの花でうっているようなものなのだ。
ここまでくる道筋でも菜の花は目にしたが、わずかであったり、クルマが近寄れない場所であったりした。
さっそくクルマを止め撮影。
白山神社のコンクリ製の一の鳥居をくぐったゆるい坂道の先に赤い二の鳥居が設けられ、階段を上ると神社が出現する。
同神社のいわれなどを記したものはなにもないが、なかなか立派な社が建てられている。神社には戦没者慰霊碑が建立されていて、古くは日南の役、日清戦争、そして日露戦争までの戦没者名が刻まれていた。
千葉県で日露戦争の戦没者をまつった碑はよく目にするが、日南の役の戦没者名を載せた碑はたぶん珍しい。
明治時代に九州を戦場とした西郷隆盛を盟主とする士族の反乱を鎮圧するために、大久保利道率いる政府軍側について従軍したであろう兵士のひとりが、この周辺の集落からでて、亡くなったことを示すものである。
なおもk88をゆく。
館山市三芳の近くからk88と並行している安房グリーンライン(安房地域広域農道)へと進路を変える。
安房グリーンラインはR128・k187と交差するまでは、視界のいいストレート区間が多い。
山名川に架かる橋の脇道に再び菜の花が群生しているのを発見。砂利道の1車線農道を伝い、菜の花に近づく。日陰の川の土手斜面には終わりを迎えた名残の白い水仙の花も。
グリーンラインとR128、k187が交差する稲の交差点。交差点先に内房線の踏切(九重駅近く)がみえるが、この踏切を渡るのがグリーンライン。道なりではR128に誘導されてしまう。注意が必要。
グリーンラインはR188先からが曲率の大きなコーナーとストレートが連なる高速ワインディングロードになっている。道も新しくアスファルトの路面も黒い。ただ、山間というか丘陵地帯をいくので景観はきかない。
POLOは停止から発進する際に1速でスタートするが、すぐさま2速にシフトアップする低燃費ギアシフトするプログラムになっている。
しかし、2速が比較的ローギアードであって、このワインディングロードの下りでは2速であってもエンジン回転数がどんどん上がっていってしまう。結果、コーナーに入るまでに2速で減速しきれず、オーバーレブしそうになるのでフットブレーキを踏まざるを得ない場面にいくたびか直面する。
この区間でクラッシックカーが前方を走っているのが目にとまった。1920年代に製造されたブガッティのたぶんタイプ35だと推測する。めったにみられるクルマではない。ドライバー、コドライバーとも第一次世界大戦の戦闘機乗りのような、革製のヘルメットをかぶり、クルマの雰囲気に素晴らしく似合っている。
完璧に整備されているのだろうが、ガススタンドすらない山道に、伴走車も連れていないようで、単独で太古車を連れ出していることに驚く。
安房白浜トンネルを抜けると、視界がパッと開け平地に降りてきたことがわかる。天候がよければ、輝る海を望むこともできるだろう。
白浜町で道なりR410にでる。いったん右折して房総最南端の野島崎に向かう。灯台の見える駐車場にクルマを入れる。気温は16度近くあるのだが、風が強い。体感温度は低い。寒い。灯台まで歩いて行く気力がわかず、R410に戻って千倉方面に向かう。
その際、R410よりもひとつ海側を走る道路(r297に直結)を選択。ところが、防波堤の高さに遮られ、海を望みながら走るというわけにはいかなかった。
R410から海沿いの道に入るところで、海辺に車を寄せた。快晴だが強風に乗って強いうねりを帯びた浪が海岸に勢いよく押し寄せ、岩場ではじけ飛んでいる。クルマのドアを開ける際に気を付けないとドアを風に持っていかれ、ヒンジを壊されかねない様相だ。
この海沿いの道は市販道路地図には「海が見えるルート」と書かれているのがあるのだが、クルマから見えるとは記していないので、あながち間違いとはいえず、ワンボックスなど視座の高いクルマなら、あるいは海を望見できたるのかも知れない。
千倉漁港では、くすんだ空色に変わった年季の入った木造の同組合事務所建物がなかなかいい雰囲気を醸し出している。
k197とR128がぶつかる下三原交差点で海に別れを告げる。k186・R410へ。「酪農のさと」先の航空自衛隊の「峯岡分屯基地」(防空レーダーサイト)入り口前のR410から右に登っていく狭い分岐路が嶺岡中央林道2号線である。林道標識もある。
峯岡分屯基地敷地内には千葉県最高峰の愛宕山山頂(408㍍)がある。ハイカーには知られた山だが、登頂するには自衛隊にあらかじめ予約しないとならず、いきなり訪れても登れない。
同林道は舗装されてはいるが、1・5車線程度の道幅である。鴨川に降りるにしたがって急坂となるが、それまでは直線の長い林道としては走りやすい道だ。ただ、生活道路としても機能しているらしく対向車とすれちがうこともあり、走行日も2台と出くわした。
同林道にはハングライダーの離陸場が隣接されており、ここでの眺望はグッド。眼下には田植え前の水を引きいれた早春の田圃などがみえる。
同林道はR128の鴨川寄り嶺岡トンネルを抜けたところで同国道と合流する。R128で鴨川のシーワールドを通過し、安房天津でk81の清澄養老ラインへと入っていく。
途上、清澄寺に寄る。もともとは真言宗の寺として創建されたが、明治の廃仏毀釈政策にともなって日蓮宗に改宗することで、今日まで生き残ってきた寺である。
古刹とはいえ交通の便に恵まれているといはいえない立地の寺であるためか、房総ではちょっとは知られた存在なものの、日曜日だというのに観光客はまばらで閑散としていた。門前の土産屋もシャッターを降ろしているのが数軒みられ、閉鎖しているようだ。
同寺本堂前の香炉は「トーハツ」(東京発動機)が寄贈したものであることを示す社刻印が入っている。船外機を使う漁業関係者か、浅間レース時代を記憶する古いオートバイファンしかもう知らないであろう、かつてのバイクメーカーがトーハツである。
トーハツは一時、バイクのトップメーカーだったこともあるのだが、優良会社だったことが経営者を保守的にさせたのか、スポーツカブ(ホンダ)などに代表される小型スポーツバイクの進出に後手に回るなど流れに乗れず、バイク事業からは昭和40年代前半に撤退を余儀なくされた。
現在、トーハツは船外機や消防ポンプなどの製造会社として存続している。
清澄養老ラインは七里川温泉手前の道が狭い。片側が山の法面、もう片側下が川で1車線しかなく、対向車との離合は難儀する。離合するために設けられた待避箇所で待つか、待たせるかして、通過するほかない険道である。
七里川温泉先からR465・R410経由で久留里を経てk32に入り、小湊鉄道の月崎駅前を抜けて、ゴルフ場が林立するk172・k173に入り高滝ダムへと走らせる。
月崎駅は木造で周囲に桜(ソメイヨシノ)と菜の花がみられる撮鉄の名所なのだが、いずれも開花前。しかし、それでも駅駐車場にはバイクやクルマが多数止まり、撮影ポイントであることを示している。
実はR465沿いの上総亀山の亀山ダムに寄ったのだが、ウイークデーしか管理事務所を開いていない。ダムカードの配布を受けられないことがわかり、それならと高滝ダム(1990年完成、重力コンクリ製)へと向かったのだった。
高滝ダム湖は平坦でだだっぴろくダムカードをもらえる管理事務所がどこにあるのか、わかりずらい。カーナビに打ち込んだほうが効率的に事務所に到着できる。
ダムカードは事務所の隣にある市原市地域振興財団が運営する「レストラン高滝」でもらえる。気さくなレストランのおばちゃんにその旨伝えればよい。ただ、レストランは午後3時でオーダーストップするので、その時間前に到着することが必要かも知れない。
ダムからはk168経由で館山道木更津南ICに向かい帰路についた。
■全行程(GPS):約357km/最高高度(GPS):約348m
■フォトギャラリーはこちらです。