暦のうえで春を告げる立春を過ぎた2月7日、早春の房総の林道群を駆け巡った。市原から木更津、君津にかけて房総半島中央部の丘陵地帯を南北に縦断している丹原(たんばら)、音信山(おとずれやま)、万田野、大福山の短距離4林道を今回のメイン走破ルートに設定した。使用車両LUTECIA。
音信山で標高186㍍、大福山で292㍍という低山である。各林道とも山梨、群馬、長野などの高山周辺を縫って走る林道に比べ、急坂、ヘアピン連発などの険しさは薄く、路面もおしなべてフラットで走りやすいのが共通項目としてあげられる。加えて景観もよく似ており、みわけがつきにくいなか、大福山林道はダートが残るうえ、山の稜線を走る部分もあって特徴的な部分はある。
最初に向かったのは北に位置する丹原林道。袖ヶ浦フォレストレースウエイ近くの国道409から同林道は分岐し、千葉県道168につながって終わる5㌔強(車載メーター)の林道である。林道入り口は竹林だが、強風にあおられたのか、竹が途中から折れており、道路に覆い被さっているが、乗用車なら問題なく通り抜けられる。直線と緩いコーナーが組み合わさったスギの疎林が道路際に広がる林道で標高差も40㍍程度と大きくない。県道169に接続する手前が丹原の集落で、農作地が広がるし、民家もある。丹原開墾と呼ばれる地区があり、入植者が山林を農地に変えたことがうかがえる。
フォレストレースウエイの手前にときわ台という住宅地がある。住宅地の前から409から左折していく小道に入り込んだ。丹原林道につながるよう地図には描かれている。最初は鋪装路だが、まもなく軽自動車に適した完全1車線のダートになり、点在する農家とおぼしき住居前のみ簡易鋪装されている怪しげな道である。両側から山が迫る谷地だが、周りは田圃が広がる。早朝ゆえ田には霜で真っ白。気温零下5度とこの日の最低気温を記録した。山からの冷気が谷に降りて溜まり気温が低いのだろう。残念ながら丹原林道への道は轍掘れがひどく、農作業車しか通っていない雰囲気で乗用車では通行は困難と判断して、通れる道なりに走行し409に戻った。
高滝湖の西にある音信山林道は距離6㌔、杉木立の中を登ったり降りたりしながら県道160に突き当たって終了する。標高差はおよそ80㍍で、道路を通して標高も100㍍を超えているものの、険しくはなく、またたく間に走り終えてしまうだろう。
距離4㌔強の万田野林道は県道160と同32までの間を縦断し、市原市民の森の脇をかすめている。ストレートと中速コーナーが交互にでてくる林道で、今回走った林道群のなかで最も走り甲斐があった。標高200㍍を越える部分もあって、前々日に降った雪がうっすらと残り、コーナーを覆っているところもあった。同林道は幅員4㍍、距離約4㌔だが、道路の両肩には落ち葉がつもり、1・3車線程度にせばまってみえる。これは丹原、音信山の両林道とも似たような状況である。
大福山への道は林道養老線と標識には表示されている。以前は石塚林道といわれていたようだ。片側1車線ずつの登りではじまる山中にしては立派な道路で「これで林道?」と面食らうが、安心してよい。ほどなくして1・5車線程度の林道らしい狭さに変わるからだ。ぐんぐん登っていくと頂点らしい場所にブルーシートが敷かれた広い窪地がみえてくる。人目につきにくい場所に建設がほぼ終了した感のある産業廃棄物処理場であった。路面はダート。
産廃場先で道路は二手にわかれる。左が大福山林道、右手が林道坂畑線となる。坂畑線を走る予定はなかったが、右に折れて走ってしまい途中で間違いに気付いたものの、とりあえず坂畑線を全線走行した。鋪装の下り坂で亀山湖際の国道465まで林道は続く。465近くに坂畑の地名があり、同林道はその地名をとって名付けられたことがわかる。同林道は鋪装路ではあるものの、路面にラフさが目立つ。路盤を横断する排水溝の段差が大きく、速度を落とさず、乗り越えると強い衝撃がクルマに伝わってくる。
同林道を往復し、大福山林道への分かれ道まで戻る。
大福山林道は女ヶ倉林道との分岐点までがダートだが、路面は固く締まったフラット状態で、前々日の雨(雪)にもかかわらず、路面はまだ湿っているものの、ぬかるんではいない。女ヶ倉林道入り口から500㍍先に展望台がある。といっても房総の低山の山並みが眺望できる程度にすぎない。大福山の標高は292㍍で東京タワーの高さにおよばないのだからそこからの景観はたかがしれている。
大福山林道は女ヶ倉林道の分岐から先は鋪装路面となり、途中で戸面蔵玉林道と合流しつつ国道465にぶつかる。丹原、音信山、万田野、大福山に加え、今回走行しなかったが馬立から入る米田の5林道をまとめて養老林道と呼ぶようだ。すべての林道が開通してから今年で41年目となる。着工からみると、ちょうど50年目にあたる。
星井畑を過ぎて御嶽山(341㍍)の手前で二股路にでる。麻綿原には右手を選択するのだが「路肩崩落のため7㌔全面通行止め」の標識。ただ、ゲート封鎖されているわけではなく、天拝園(妙法生寺の境内)までは行けそうとみて、入り込むことにした。ただ、この道はアジサイの見頃時期である6月20日~7月末までは、麻綿原高原の東側を通る県道178の会所方面からの一方通行となる。つまり、それだけ道路幅が狭いということを示す。
全面通行止め標識が効いているのだろう、通行する交通量が少なく、だんだんに路面の状態が悪くなる。落ち葉や小枝が道一杯に散乱。道路に落ちている30㌢程度の石をクルマから降りて、除く作業を強いられた場所もあった。
しかし、天拝園には無事到着。日蓮宗の妙法生寺(みょうほうしょうじ)はなかなかに大きく大きな寺で、えらを見下ろす高台の展望台には仏陀がまつられ虚空をみつめている。見つめている先に山並みを通して太平洋(小湊方面)が望めた。当日、晴れたり曇ったりの天候だったが、晴れ間には太陽光を反射し、キラキラと輝く海面がみえ、今度のドライブでもっとも眺望の優れたロケーションであった。この寺は自らパワースポットであることを宣伝しているところがおもしろい。同寺には2万株のアジサイが植栽され、アジサイ寺の別名がある。
寺から会所方面に抜けようとしたのだが、ここでゲート付き通行止めとなった。先の全面通行止めはこれを指していることになるが、7㌔先通行止めと標識に記載すべきだろう。車載メーターで6㌔強となっており、ほぼ標識の距離と符合した。
会所にでられないために神明川に沿っている天津林道を走り、国道128に抜けるしかない。同林道は豪快なダウンヒルが持ち味で、右に左に折れながら標高300㍍から4㍍まで一気に高度を落としていく。傾斜角10度を軽くこえる急坂もある。アクセルオンとブレーキキングで駆け上がる128から登ったほうが走りを楽しめるかもしれない。
国道128沿線には房総に春を告げる菜の花の花壇に黄色の花が咲き乱れていたことを付記しておく。
■全行程(GPS):約282km/最高高度(GPS):約335m
■フォトギャラリーはこちらです。
■フォトギャラリーはこちらです。