国道最高標高点の渋峠(2172㍍)を目指して国道292(草津道路)を登坂していくと、ロープウエイ乗車口のある殺生河原(1500㍍強)でクルマが珠々つなぎに停止中。白根火山の噴火警戒レベルが昨年6月に一段階引き上げられ2(火口周辺規制)になった。これにともなって、同河原から万座三叉路までの区間通行が8~17時までの間に制限されているためだ。
到着したのが午前7時25分。都内を出発したのが同3時40分。関越道松井田妙義ICで降り、松井田の町で昭和13年に竣工したレトロな外観の松井田商工会ビルを見るなどして、草津道路に入ったが、ゲートオープンするまで35分ばかり待たなければならない。渋峠までの道程で気温6度と、都内出発時点での12度の半分しかなく、空気も冷たい。
渋峠への292は一昨日(4月24日)に冬季閉鎖解除。開通を待ちわびたように、この日の予報通り好天と相まって朝早くから続々とひとびとが繰り出しているようだった。さすがお役所仕事というべきか、きっちり8時にゲートを開けた。停車していたクルマはやっと動き出せる状態に。
同河原に着く前にも路肩部分に残雪があるが、この先は除雪したとはいえところどころ雪の壁の間を走ることになる。雪壁の高さは最長5㍍といったところで、大型バスの屋根をはるかに上回る雪壁の間を通り抜けていく黒部アルペンルートには遠くおよばないのはやむをえない。山田峠までくると、白根山の火口が白い雪が埋もれているのを垣間みることができる。
噴火レベルが引き上げられたことで、2箇所で監視員を配置しているほか、白根レストハウス駐車場はロープを張られ駐車禁止で、事実上、休業に追い込まれている。
渋峠先の横手山で雪をかぶった遠くアルプスの山々の頂きと、スモークドガラスを置いたかのようにその下部が黒くみえる景観に遭遇。山々の下部は朝靄に覆われ、光線のかげんでフィルターをかけたように融雪部が黒く見えるのだ。朝靄のたつ早朝でないと、みられない光景だ。また、黒い山肌と山襞の白い残雪が織りなす景観は墨水画をみるがごとくである。
木戸池で小休止。ホテル前の小さな池は厚く氷結し、周囲の木々も芽吹いておらず、ここでは春はまだ遠い。
今回、関越松井田妙義ICから松井田の町を経て群馬県道33の地蔵峠(692㍍)を通り、国道406、同145,同292と乗り継いで渋峠に向かった。地蔵峠手前は狭く、荒れた路面の箇所を通るが、同峠を越えた高崎市側に入るとフラット路面に変わり走行しやすくなった。
406は須賀尾峠(1040㍍近辺)は木々が冬枯れ状態だが、同峠から145に突き当たるまでの区間はコーナー幅が広いヘアピンが連続して表れ、ちょっとしたヒルダウンを楽しめる。
大津で145から292に入るが、たぶん292の旧道にあたるのだろう洞口で道路の両脇に桜の花をつけた並木道に出会う。民家前を流れる水路には民家ごとにかつて、この水路で洗濯でもしたのだろう、今ではめったにみられない洗い口が設けられていた。
さて話を戻して、木戸池から292をどんどん下り、小布施に向かう。湯田中近辺では夜間瀬川堰堤に散りつつあるものの、まだ桜の花が残っている。箱山バス停(長野電鉄)脇の小高い山に赤く塗られた神社が鎮座しているのをみつけた。
急な階段を徒歩で昇っていくと、山内稲荷社なる神社であった。日当たりがよく神社に沿って植えられた桜は葉桜になる寸前だったが、満開なら神社はずっと映えて見えたことだろう。292から長野県道29から広域農道北信濃くだもの街道を選んだが、同農道は民家や商店が道沿いにある生活道路であって、気持ちよく田園の中を走るという雰囲気はない。
小布施ー人口1万2千人の小さな町だが、あかり博物館など6つの文化施設があり、なかでも晩年の葛飾北斎が逗留し、多くの浮世絵を描いたことで知られる北斎館が、この町の一番の売り物の観光資源であろうが、こういった施設には寄らない。昼頃に町に到着したが、観光客がガイドパンフ片手にぞろぞろ散策している。年季の入った土壁の味噌蔵や、煉瓦造りの煙突のある地酒会社にカメラを向けつつ、次の目的地である須坂に急ぐ。
須坂では旧上高井郡役所にクルマを着けた。大正6年に建築された2階建て木造洋風建築で、この時期の建造物の定番といえるウグイス色に塗られた板壁が時代を感じさせる。入館無料で内部も見学できるが、展示物には外観ほどには関心のあるものはなかった。
須坂で本日の往路は終わり。復路として県道112、県道466を通り万座先で再び国道292に合流という進路をとる。112は万山望というビューポイントらしきところまで登りが続くが、おおむね幅員も十分あるワインディングロードでヘアピン多発帯があり、法面の残雪を望みながらの走り甲斐のあるドライビングルートである。
万山望先から112は行き止まりの毛無峠に向かっている。この近辺は盛夏は雑草が繁茂し幅員が狭くみえるが、今の時期は雑草が消え、2車線幅が確保された幅員であることがわかり、道の様相が大きく異なる。毛無峠への分岐点からの112は路面に30㌢はありそうな雪が道路に積もったままで、除雪されていない。冬季閉鎖された状態である。
万座峠を越えれば、まもなく292に合流し、西の河原で群馬県道55に入る。55は草津高原ゴルフクラブ先の大沢川観測所からが狭く、路面も荒れている。加えて凍結時の滑り止めの砂が盛大に路面を覆い、ダートかと錯覚してしまうほどの箇所も。
55は国道矢倉発電所の焦げ茶色の揚水管の下をくぐるとまもなく国道405にぶつかる。同国道を左折すれば野反湖に向かうが、今回は右折し白砂川に沿って南下。白砂渓谷ラインと銘打たれた405、道なり292はコーナーも大きく走りやすい。入山地区(群馬県吾妻郡中之条町)で午後2時過ぎとなり、いつものように遅い昼食。405沿いの「野のや」でマイタケ天の入ったソバ屋とした。コスモ石油のGSがソバ屋から数十㍍離れてあるので、簡単に見つけられるはず。1000㍍の高地で栽培されている、市場には出回らないマイタケを食してもらおうとはじめたお店だそうで、コシのあるソバと相まってなかなかイケる。
405と292との交点(405起点、荷付場)で50余りの大きな鯉のぼりが川をまたいで泳いでいる。5ナンバー車でやっとの道路幅の、山にへばりついた川沿いの小集落で掲揚しているようである。
暮坂峠(1088㍍)を通過する55はヘアピンもあるが走れるコーナーがとくに続く、ハイスピードワインディングロードである。同峠には若山牧水の石碑がある。峠下には牧水の碑まで登っていく暮坂旧道の入り口があるものの、遊歩道としているため車両の通行はできない。
55は国道353に行き当たるが、国道と並行している県道234、35,36経由で関越道渋川伊香保ICに。35,36は生活道路でクルマが途切れなく走り、国道のほうが空いているように見受けられた。同ICに16時20分に到着。今回の走行完了。
■全行程(GPS):約546km/最高高度(GPS):約2,183m
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