2015年8月4日

奥利根ワインディングロードの夏

 みなかみ、宝川など沿道沿いに温泉があることで、ゆけむり街道と名付けられたのだろう、奥利根の群馬県道63と国道120を走り抜けた。距離は短いものの、すべてワインディングロードといって差し支えなく、山岳路好きは楽しめる道である。走行日7月25日。使用車両c63。

C63AMG

 関越道水上IC国道291に降り、上越線湯桧曽駅約1㌔手前の大穴交差点から群馬県道63に入る。最初に向かうのは藤原ダムで、継いで須田貝、矢木沢、奈良俣の3ダムへと続くダム街道を走る。藤原ダムをバイパスする道路が左折分岐する栗沢交差点を過ぎると、それまで点在していた人家は絶える。63は本格的な山道の様相を呈し、適度に屈曲しながら周囲を植物の緑に彩られつつ高度を上げていく。水上IC到着が午前5時40分。6時前後に屈曲路に入ったが、この時間帯では交通量はきわめて限られたものだ。

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 藤原ダム堰堤の放水路直下脇に近寄れる細道が63から分かれているが、それを示す標識はない。両脇を雑草が生い茂るピストン小道をたどっていくと、放水路側の堰堤がまじかにみえるところに一般住宅のような管理事務所が設けられ、道は行き止まりとなる。堤高95㍍、堤頂長230㍍の建設から時間の経過をしのばせるコンクリが褐色に変色したダムを見上げるかたちになる。同ダムは1957年(昭和37年)竣工で、利根川上流域では比較的初期の建設。

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 再び63に戻る。63は同ダムの堤頂上を通過する。みなかみ町藤原の武尊トンネルを抜けた先で左カーブ気味の63途中から標識に従って裏見滝に向かう道に右折。登りの狭い道で、宝台樹スキー場に行き着き、再び63に復帰できる道である。スキー場の二人乗りの青色シートのリフトのかかった架線下をくぐり抜けるところまでくると、左下にレストハウスが小さく望める。

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 ゲレンデのなかを伝っている道のようで、スキーシーズンになると、雪で覆われ通行できないのだろう。今は営業を終えた時期だからゲレンデ部分は雑草が生い茂る緑の草原とかしている。レストハウスのあたりから民宿や旅館などの宿泊施設街となる。気温が低いためにすでに平地では咲き終わってしまったアジサイがここでは白や紫の花弁をつけ、いまだ見頃の状態であった。急坂をどんどん下りていくと、63に合流する。

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 63は須田貝と大芦の間から矢木沢ダム方面へと向かう道が分岐する。矢木沢ダムに向かうには専用道を走る。冬季閉鎖明けから9月末までは午前6時~午後6時30分までの時間帯のみ通行可能。つまり夜間は通行止めである。約7㌔の同専用道入り口にはアーチがかかっているのでそこからはじまることがわかるが、通行時間帯まで表記されていなかったように記憶する。

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 この道路はもともとダム工事用に造られたのだろうが、広い幅員の登坂路でとても走りやすい。須田貝ダムの建設によって利根川と楢俣川がせき止められてできた細長い洞元湖の左岸に沿って矢木沢ダムまで登り詰めていく。洞元湖岸際には立ち枯れした木々をまばらにみることができる。須田貝ダムの建設が1955年。立ち枯れ木はすでに60年もの時間を途中していることになる。途中、10数匹の子連れの野猿の群がクルマなどまるで気にせず、のんびりと道路を横断していた。一時停止したり、スピードを落として猿をやりすごす。道路上には枝端が転々と散乱。皮が剥かれているところをみると、猿が食したのだろう。

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 矢木沢ダム駐車場に到着-。午前7時過ぎで、気温18度と当日の最低温度。駐車場は30台程度収容できそうな広いスペースがあるが、午前7時少し過ぎにもかかわらず、すでに10台前後の車両が止まっている。


 深緑色した湖上にはフィッシングボートが浮かんでいる。駐車車両の多くはSUV。ボートを牽引してきたのだろう。ちょうどフォレスター(スバル)にバス釣り用のボートを牽引してきたカップルが、湖面にボートを降ろすべく、準備している最中だった。1967年にできた高さ131㍍のコンクリアーチ式で東京都の水瓶としても知られる同ダムは利根川最上流部に位置する。車両で行けるのはここまで。ダム湖(奥利根湖)に流れ込んでいるのは沢が多い。駐車場はダム堰堤頂の左隅にあり、湖を覗くと、たくさんの流木がキャッチフェンスでせき止められていた。

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 矢木沢ダム専用道に戻り63に復帰し、こんどは奈良俣ダムに。堰堤頂158㍍の日本最大級のロックフィル式ダムで同形式の特徴である景観性に富んでいるが、営業時間前とあって松本ナンバーの一台の大型2輪ツーリストが訪れていただけであった。

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 また63に戻り、照葉峡、坤六(こんろく)峠へと向かう。かつて尾瀬奥利根林道、次いで湯の小屋林道、さらに町道湯の小屋戸倉を経て現在の県道63に名称が変わっていったとされる木の根沢に多くを沿う道路である。右手に取水堰の看板がみえると大型車通行規制道らしく幅員はいっきに1・5車線に狭まる。しかし、63の奈良俣ダム分岐点の標高820㍍から坤六峠の1630㍍までステアリングを右に切り、左に切りして標高を上げていくワインディングロードで、緑のなかを走るために眺望は効かないものの、対向車に気を付けていれば、それなりにおもしろい。

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 坤六峠ー脱力してしまうような名称の峠だが、尾瀬奥利根林道として開通(1970年)させるにあたり尽力した当時の群馬県知事(神田坤六氏)の名前を冠したもので、それまでのいわを峠から改称された。峠には3本の丸太が立てられ、峠名が刻まれている。丸太の大きさはネット写真などでみると、大きくみえるが、実際は2㍍超と意外に小さい。また、林道開通記念石碑と雨量観測機器が峠に設けられている。

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 同峠を過ぎれば、下りとなるが、依然としてワインディングロードが続く。津名木橋の右カーブで尾瀬方面の鳩待峠に向かう群馬県道260と合流。同峠へは一般車進入禁止日のため、合流点のポストで監視人で目を光らせていた。その側をハイエースクラスの乗り合いタクシーが尾瀬を散策しようとするハイカーを乗せてどんどん通り抜けていく。この後も63には片品村方面から尾瀬に向かうタクシーや保育園の送迎などに使われるコースター(トヨタ)級の小型バスが260に向けて続々と走っていた。大型観光バスをすれ違いさせるだけの幅員がなく、最大でも小型バスしか通り抜けられないのだ。

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 スノーパーク尾瀬戸倉のスキー場近くの西栗橋で63から右にゆるやかに分かれ、戸倉の街中を経ず、堂平山(1310㍍)の東を通って古仲で国道410に抜ける山道を見つけ進入してみた。1・5車線幅の登り坂で道の両側のスギ木立のなかを往くひんやりとした空気に包まれた林道然とした数㌔の小道。路面には前年秋に散ったとおぼしきスギの枯葉が舞い落ち、陽が差しにくいために湿っている、という雰囲気のある道である。林道を示す標識は見つけられなかったが、途中に尾瀬金井沢オートキャンプ場がある。

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 410から国道120に入り、東北道宇都宮にダイレクトでつながっている日光宇都宮道路の日光側終点、清滝ICを目指した。丸沼高原、金精峠(1880㍍)、中禅寺湖、いろは坂と続く120。全編山岳ワインディングロードといっていい。時間帯や季節にもよるが、訪れた当日は午前10時台とあって交通量も少なく、快適なペースで清滝に到着し、今回の走行を終えた。

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■全行程(GPS):約479km/最高高度(GPS):約1,832m
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