クルマの操作系が今までとちがうインターフェースを模索し始めたようだ。今回、気儘に書き綴るのはステアリングやブレーキといった運転系じゃなく、計器パネルと空調やオーディオなどの操作系。
メルセデスのS-Class(W222)やAudi TT(タイプ8S)に搭載され注目されるようになったフルグラフィックのメーターパネル。実はこっそりジャガー XJもそうだったりします。今ほど話題になりませんでしたが、2009年にレクサス LSが12.3インチTFT液晶のフルグラフィック・メーターパネルを搭載してた。
そのフルグラフィック・メーターパネル、速度計やタコメーターにとどまらず指針を含むすべてがグラフィックとして描画される。誇張して表現するならこのブログを読んでるあなたのTFT液晶ディスプレイと同じ。表示されるレイアウトやデザインはソースやソフトウエアに依存します。従来もドラコンはメーターパネルに埋め込まれた小さなディスプレイに表示されますが、それとは精細度や鮮明度など描画クオリティの次元が違う。Audiのバーチャルメーター、ファンクション切り替えると見た目が大きく変わりゲーム画面を見るようです。最新ゲーム画面見ることなくなった熟年男子には青天の霹靂。我がニッポンが十八番としそうな分野だけど輸入車が先行してる。日本車メーカーやデバイスメーカーだって夢見たハズ。きっと、お役人の十八番、無言の圧力に屈したんだろうね。嗚呼、もったいない(>_<)
普及の障害はコストだけど、表示内容や描画クオリティはパネル解像度とソフトウエアで自由自在。極端なはなしパッソからレクサスまで同じデバイスを使い回し、セグメントに相応しい描画クオリティにすれば大幅コストダウンできるんぢゃないか。
話が変わりますが、最近の操作パネル使い回しってスゴいことになってるよね。メルセデスを例にすると、AV操作パネルやプッシュスイッチが一列に並んだプレート。加飾の差はありますが、チョッとまえまで、A、B、C、Eクラスまで派生モデルも含め同じモノ。クライメート操作パネルも似たようなもの。セグメントまたいで乗り換えてもまごつかないメリットありますが、個人的にはそんな部分をクラスレスにしなくてもいいんぢゃないかと思う(笑)
プラットフォームにとどまらずエンジンまで一新した新生ボルボ(XC90)、センタークラスターのディスプレイがヤバいことになってる。なにがヤバいって、物理的なボタンを極端に減らしタッチパネル操作にした。そう、まるでテスラのように。テスラと違うのは手袋しても反応する赤外線方式を採用したこと。北欧生まれという環境の成せる技だね。
物理ボタンは高コスト。製造にコスト掛かるし機能実行や結果表示するための応答機能も必要。メルセデスのスイッチパネルがセグメントを越え共通化したのもうなづける。その物理ボタンを減らす秘策が大型センターディスプレイなんだね。
さぁ、前置き長くなりましたが本題です。
視線移動を強いられるタッチ操作はクルマのインターフェースに向いてない。
空調温度設定を変える動作を思い浮かべてください。温度設定ダイヤルなら視線落とさずとも位置はカラダが覚えてるし触れば感覚でわかる。そいつを左右に回せば設定温度を上げ下げできる。タッチパネル操作だと絵に描いたボタモチならぬ「ボタン」ゆえ、触覚に頼れない。視線移動し仮想化された温度設定「上げ」「下げ」ボタンを正確に射貫かなきゃいけない。「上げ」「下げ」ボタンが上下や左右に並んだ物理スイッチも同じです。視線移動しなきゃ目的のボタンやスイッチを押せない。それを揺れる車内で強要するなんてヒトに優しいインターフェースぢゃない。
ワンフィート・インターフェース、ヒトの手のひらで操作するスマホやタブレットと使用環境が違いすぎるでしょ。そのスマホですら画面に集中しすぎてホームからの転落やチャリとの衝突事故が絶えない。使用頻度の高いファンクションには単機能の物理ボタンや物理ダイヤルが適してると思うのですが、コストダウンや見た目の新鮮さに負けタッチ操作が急激に増殖してる。
ステアリングスイッチも同じようなもの。代表的な音量操作、レバーやローラー式なら迷わないけど、アップダウンが別々のボタンだとステア中など視線移動したくなる。フランス車によくあるステアリングコラム奥のオーディオ操作系、ハンドルに隠れまったく見えないけど豊富なファンクションを指先だけで迷わず実行できる優れもの。
クルーズコントロールも視線移動強いられるステアリングスイッチよりコラムから生えたレバー式のほうが直感的に操作できる。クルマのインターフェースは視線移動することなく操作完結できることが予防安全に繫がる。見た目の華やかさや目新しさに釣られないようにしないとね。
最新のクルマたち、電子デバイスが危険な操作に黒子のごとく介入し安全を担保してくれる。結果、安全で快適なうえ物理の法則を超越するほど速い。その一方、プライオリティ低い情報まで着飾ったグラフィックで表示しエンターティナーになったメーターパネル。クルマはすごいスピードで電子武装されつつある。
熟年男子といえば、楽曲はLPにスタイラス乗せ、ディスクリートアンプのボリュームダイヤル回してた。クルマなら盤面を指針が忙しく動きまわるVDO製計器で育ったアナログ世代。タイトターン手前、レブ指針の角度をチラ見しシフトダウン。五感を集中しクルマと対話する。その操る歓びに浸ってられる時間は永くないようだ。